「痴漢」と叫ばれ、線路に逃走して命を落とした男の悲劇…

これは、他人事ではない事件だ
週刊現代 プロフィール

実は今年3月以降、東京都内だけでも、新橋駅や池袋駅などで、痴漢を疑われた男性がホームから線路に飛び降りて逃走し、電車が遅延する事件が9件も起きている。そして、その9件中8件で、逃げた男性は逮捕されていない。

「線路を使えば逃げ切れるというイメージが広まってしまっているのかもしれません。ですが、線路に降りること自体が違法行為で、電車を遅延させれば、損害賠償請求されることもありえます。

なにより危険な行為ですから、今回のような最悪の結果にもつながりかねません」(鳥海氏)

「痴漢を疑われたら逃走」という事例が続出する一方で、東京・JR上野駅でも逃走した男性が命を落としている。

5月12日午前0時15分ごろ、京浜東北線の上り電車の車内でトラブルは起きる。30代女性が隣に座る身知らぬ40代会社員の男性に右手を握られたと問い詰めて、口論となった。

「どうして右手を握ったんですか?」

「握ってない!」

二人は上野駅で下車したが、男性は突然走り出し逃走した。だが、女性が呼びかけて、周囲の男性客に取り押さえられる。そして、駅員が到着した。

「複数の男性に抱えられるようにして男性はホームを歩いていましたね。そのままおとなしくエスカレーターに乗り、構内の駅員室へ向かっていきました」(当日駅を利用していた目撃者)

「死への一歩」を踏み出す時

だが、駅員室に到着した男性は、警察官が到着するまでの一瞬のスキをついて、再び逃走を図る。

「0時50分を少し過ぎた頃、ワイシャツにチノパン姿のきちんとした身なりの中肉中背の男性が中央改札を強引に突破して走り出る姿を見たんです。

その時間帯、駅付近にはそれほど人はいませんでした。異様だったのは、男性が顔面蒼白で首を振りながら必死に走っていたこと。手ぶらで、しかも途中で脱げたのか、靴も履いていませんでした。

駅を出るとすぐ横断歩道があるのですが、男性は赤信号を無視して走り抜け、繁華街の路地に入っていきました。

すぐ後ろから『待て~』と声を上げる駅員とOL風のファッションをした女性も追いかけてきました。さすがに二人は赤信号で立ち止まりました。

酔っていたからなのか、女性は笑みを浮かべて『誰か~その人、捕まえて~』と大声を上げたのですが、周囲の人はわけがわからず、皆ボーッと彼らの様子を見ているだけでした」(前出・目撃者)

雑踏の中、男性は目についた6階建ての雑居ビルの非常階段を駆け上がる。狭い階段にはゴミ袋や食材など様々な荷物が置かれていたが、男性は一気に屋上まで上がった。

 

「午前1時頃、ドサリと大きな物音がしたんです。まさか人が落ちたとは想像すらしていませんでした。なんだろうとビルとビルの隙間を覗くと、そこに倒れてモゾモゾと動く人影があったんです。うめくような声も聞こえました。

それから、駆けつけた警察官と救急隊が彼を担ぎ上げて柵をこえ、救急車が出発するまで30分はかかったと思います」(別の目撃者)

転落現場は幅70cmほどの狭いスペース。転落の衝撃により突き出た配管のパイプは大きく曲がり、地面の砂利の一部は赤黒く染まっていた。男性は病院に運ばれたが、死亡が確認された。

「男性は隣接したビルに飛び移ると、その屋上の角から地上に向けて飛び降りました。そこから先はもう飛び移れる場所はなかったんです。

ほとぼりが冷めるまであの場所に隠れているという選択肢もありました。ですが、おそらく鞄が警察側に確保されていた。

飛び移った先のビルの屋上で、自らの身元がバレていることに気づき、これで仕事も家庭も失うと絶望して、飛び降りてしまったのではないでしょうか」(全国紙社会部記者)

'12年12月、JR西日本執行役員が、痴漢の現行犯で逮捕され、釈放された後、首吊り自殺したことは記憶に新しい。同役員は「腕が当たったかもしれないが痴漢はしていない」と主張していた。

上野駅での被害女性についてはこんな情報もあるという。

「被害者は、非番の女性警察官だったという話が担当記者の間で出ています。だからこそ、右手を触ったという軽微とも思われる疑いでも見逃されることはなかったのでしょう。

もちろん、彼女の訴えは正義感からの正当な行為と思われますが、追い詰めすぎではという声も出ています」(前出・全国紙記者)