中国の「フィンテック」が日本のはるか先を行くのは当然だった

取引額も投資額も約30倍!
野口 悠紀雄 プロフィール

中国が「一帯一路構想」によって、東南アジアからヨーロッパに至る広大な地域において経済的覇権を握ろうとしていることは、しばしば報道される。これはインフラ投資などを政策手段とするものであり、政府が主導する側面が大きい。

ただし、それだけではなく、金融インフラの面においても、中国が世界的な規模で指導権を握ろうとしているのだ。そして、これは、民間企業によるものだ。

日本では、「中国経済は急成長しているが、その実態は先進国経済の物まねであり、国有企業等の巨大企業や政府の役割が大きい」というイメージを持っている人が多いだろう。

そうした側面があることは、否定できない。しかし、他方において、政府の統制の及ばない自由な経済活動が急速に広がっているのも、事実なのである。フィンテックなどのIT部門は、その典型だ。

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ビットコインでさらに状況が覆される

ところで、以上で述べたのは電子マネーであり、これは、伝統型技術による金融革新だ。電子マネーのシステムは、送金手段として最終的な形態ではない。ビットコインなどの仮想通貨が普及すれば、これを駆逐してしまう可能性がある。

一般には必ずしも十分に認識されていないが、電子マネーとビットコインなどの仮想通貨は、全く異なるものだ。

電子マネーが特定の管理者によって運営されているのに対して、ビットコインのような仮想通貨は管理者を持たない。「ブロックチェーン」という新しい技術によって、管理者なしに自動的に運営されているのである。(拙書『ブロックチェーン革命』日本経済新聞出版社、2017年、参照)

日本が仮に将来の金融の世界で主導権を取り戻すことがあるとしたら、それは現在の日本のブランチ・バンキングを途上国に輸出することによってではなく、電子マネーのシステムを超える仮想通貨のシステムを導入することによってなされるだろう。

これは、原理的に考えれば不可能なことではない。ただし、それを進められるだけの人材が日本にいるかどうか。大変心もとない状況だと言わざるをえない。

未来の金融がどのような姿になるのか? 新しい世界でどのような金融システムが主導権を握るのか? この答えは、現在のところはっきりしない。ただし、新しい金融技術に対応できた国が21世紀の金融の世界をリードすることは間違いない。