東芝が倒産する日~「日本経済史上最大級の惨事」はいつ起こるのか

カウントダウンが始まった
大西 康之 プロフィール

世耕大臣の詭弁

5月17日、国会の経済産業委員会で民進党の近藤洋介議員が世耕大臣に噛み付いた。

「東芝は現在、決算について監査法人から同意意見をもらえない異様な状況にある。その会社に産業革新機構を通じて公的資金を投入するのは、大いに問題だ」

銀行の融資継続すら危ぶまれる会社に、何千億円もの血税を投入しようというのだから、野党が懸念するのも当然だろう。世耕大臣はこう答えた。

「東芝の会計に問題があることは承知しているが、産業革新機構が投資する東芝メモリは子会社として成長性がある。

投資によってオープンイノベーションが進むと産業革新機構が判断し、その件が経産省に上がってきたら、私はその判断を認めるだろう」

詭弁である。

東芝が東芝メモリを売却するのは、オープンイノベーションを促進するためではなく、原子力事業の失敗によって陥った5400億円の債務超過を解消するためである。

すなわち「東芝救済」だ。

しかも救済できる見込みは極めて薄い。何千億円もの血税が泡と消えかねないギャンブルなのである。

しかし経産省内部には「液晶パネルと半導体メモリでは技術の重みが違う」という意見があり、世論の反対を押し切って半ば強引に、産業革新機構・KKR連合に東芝メモリを買わせるかもしれない。

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恐ろしい「偶発倒産」のシナリオ

だが、今度は別の障害が立ちはだかる。

東芝の半導体事業のパートナー、ウェスタンデジタル(WD)だ。

これまで東芝の四日市工場などに共同で巨額の投資をしてきたWDは「東芝は、自分たち(WD)の同意なく東芝メモリを他者に売却することはできない」とし、米国の裁判所に売却の差し止めを申し立てた。

WDは、19日の二次入札には参加していないが、これとは別に、自社が東芝メモリに過半を出資する提案をしている。

東芝にとって手っ取り早いのは、産業革新機構・KKR連合にWDを巻き込むことだ。

経産省はなぜだか理由はわからないが、日本企業が米欧企業に買収される場合は「技術が流出する」と騒がない。

だがWDが加わると、今度は中国が黙っていない。スマートフォンやパソコンの生産が集約された中国は今や、世界最大の半導体の買い手である。

その中国の独禁当局が「ノー」と言えば、産業革新機構・KKR・WD連合による東芝メモリ買収は成立しない。

NAND型フラッシュメモリは東芝メモリと韓国サムスン電子、WDが圧倒的な世界シェアを持つ。WDが東芝メモリを買えば、市場はさらに寡占が進み、供給側の価格支配力が強まる。こうした場合、主要国の独禁当局が認めないと買収は成立しない仕組みになっている。

つまり、現在、既定路線として報じられている「東芝メモリ売却による債務超過の解消」は、絵に描いた餅なのだ。