「震度7に60回耐える」機能は、住宅に本当に必要なのか

住宅メーカーの生き残り戦略を分析する
山下 和之 プロフィール

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だからこそ、タマホームの例にあるように低価格戦略によってシェアを高めて、売上げを確保していくことが現実的に可能になるのだろう。アキュラホーム、アイダ設計などのビルダーもほぼ同様の戦略をとっている。

しかも、かつては安かろう、悪かろうという見方もあったこうしたビルダーの商品も最近は品質が向上している。たとえば、国が進める耐久性や耐震性、省エネ性などに優れた住宅を認定する長期優良住宅制度の条件を、標準仕様でクリアできる商品も登場。急速に、大手のレベルに肉薄しつつある。

そうした追い上げがあるからこそ、大手としては一段の差別化を促進するため、「震度7に60回耐える家」や「年間光熱費が20万円のプラスになる家」などを開発してきたといっていいだろう。

もちろん、震度7に60回も耐えられる住まいなら安心感があるし、高断熱・高気密の徹底した住まいなら、地球環境に貢献し、快適で安全に住まえるメリットがある。その結果、多少価格が高くなっても、生命や財産、安全や安心、健康などには代えられないという考え方もあるだろう。

しかし、現実的な考え方をすれば、仮に震度7が2度、3度とやってきて自分の家は残ったとしても、隣の家が倒れかかってきたら意味がないし、地震後の大規模火災が発生したら防ぎようがない。それに、電気・ガス・上下水道などのインフラが壊れてしまったら、住宅は大丈夫でもそのまま自宅で生活するのは難しく、結局避難所に頼らざるを得ないことになる。

 

であれば、そこまで堅牢な家でなくとも、当初の震度7に耐えられれば十分で、地震発生後には安全を確保して避難所に駆け込めばいい――という考え方があってもいいだろう。

省エネ性能に関しても、何も光熱費が年間20万円のプラスにならなくても、快適で安心して暮らせ、それなりにCO2削減に貢献できればいいのではないかという考え方もできるのではないだろうか。

そんなふうに割り切れる人にとっては、先端的な基本性能の高さはオーバースペックになるかもしれない。実際、大手でもそうした先端技術フル搭載のフラッグシップ商品を販売するだけではなく、少しスペックを削った比較的リーズナブルな価格帯の商品も用意している。そんな住まいなら、大手であっても、3割、4割安く建てることができる。

大手のブランドにこだわらない、ビルダーの住宅でOKという人だと、それこそ大手のフラッグシップ商品に比べると半分程度の予算で家を立てることが出来る。 

住宅に安全性や強度が重要なのは事実だし、そのためメーカーが努力するのも当然だ。一戸当たりの価格をあげて、売り上げ数の低下をカバーしたいという大手メーカーの戦略、狙いも理解できる。とは言えさすがに60回もの耐震とまでくれば、「過剰」といわざるを得ないのではないだろうか。

消費者はイメージに惑わされず、自分たちにとってほんとうに必要なスペックと価格をチェックするのはもちろんだが、メーカー側にも節度あるビジネスを期待したい。それは長い目で見て、業界のためでもあるはずだ。