「天才」に近づくために、私たちは何ができるだろうか

重要なのはこの能力!
永田 和宏 プロフィール

始めてみるとこれは大変なことであった。講演大会が終わると次の大会で話すネタを考えねばならない。それこそ、寝ても覚めても、通勤の電車の中でも考えた。当たり前のことであるが、今までの研究結果を整理して考察し、従来の学説との違いを見つけ、この現象はなぜ起こるのかを考え研究論文に仕上げた。

これは新しい発想をするための訓練である。その結果、現象を観察すると次第にその中に面白い課題を見つけ出すことができるようになった。

もう一つの訓練は、国際会議や研究会で必ず質問することである。欧米の若い学生は特に活発に質問する。質問をするためには、限られた時間内に発表者の研究内容を理解し、自分の論理と突き合わせて論理の矛盾や問題点を指摘し、さらに研究を発展させる提案をする。

これは思考の整理の訓練である。自分の持っている学問の基盤を常に意識し、明確にすることができる。また、的を射た質問であれば他の質問者がそれを引き継ぎ討論が盛り上がる。

 

「どこにでも面白い事を見つける能力」を身に付けることが重要である。「面白い事」は現実に見えている事象に隠れていることが多い、それを感じ取ること。このためには感動する心を涵養する必要がある。

美術や音楽の鑑賞は重要な方法である。また、様々な考えや経験を持った人達と交流することである。そして面白い事を見つけたら実際にやってみることである。失敗は諦めることにある。諦めずしつこく継続して行えば必ず道は開ける。

もちろん同じことを繰り返すわけではない。どのようにしたら解決に到達できるかを常に考え続けることである。そして研究や仕事に区切りを付け、成果をまとめて一段ずつ階段を上ることである。

禅に次の言葉がある。大道無門千差路有り此の関を透得せば乾坤に独歩せん。私流に読めば、面白い事を見つける心が身に付けば何事にも煩わされることはない、となろうか。

人はどのように鉄を作ってきたか

読書人の雑誌「本」2017年6月号より