楽天・オコエ瑠偉に立ちはだかる「壁」〜一流と超一流は何が違うのか

野球選手の人生は13歳で決まる(6)
赤坂 英一

素質だけでは生き残れない

その年の冬から猛練習に打ち込んだ姿が、米澤に認められた。2年春の選抜大会ではベンチ入りを見送られたが、春の都大会でついに背番号18を与えられる。

3回戦で初出場すると、いきなり初安打初打点初盗塁。4回戦で高校1号となる先頭打者本塁打を放った。

全国にオコエの名前を轟かせたのは、3年夏の甲子園、100周年記念選手権大会だ。

印象的な風貌と相俟って、攻守にわたり躍動するオコエの姿は、高校野球ファンの心を鷲掴みにした。とりわけ、3回戦の初回満塁のピンチで、センターの頭上を越えようかという当たりに飛びついたスーパーキャッチは、いまも語り草となっている。

しかし、東村山シニアで渡辺が修正しきれなかった打撃の欠点は、関東第一でもそのまま残ってしまった。米澤が言う。

 

「正直言って、ウチでは悪い癖を取り除くところまでしかできなかった。手足が長いものだから、力任せに振り回してるでしょう。だからスイングが汚い。もっときれいな打ち方にしてプロへ送り出したかったんですが」

米澤も渡辺と同じように、オコエの打撃を「力任せ」と指摘した。さらに「スイングが汚い」という表現も池山の「スイング軌道が安定しない」という言葉と重なる。
オコエ自身はどう考えているのか。指導者たちが語った辛辣な言葉を、率直にぶつけてみた。

「頑張らなきゃいけないとは思ってます。ぼくの場合、走塁や守備に比べれば、確かに打撃が一番落ちますから。でも、1年目で本塁打も打ってるし、そんなにダメだとは思っていません。

指導者に言われたことの全部が全部、プラスになるわけでもない。自分でやってみてダメなものは、すぐに消すようにしてます」

そんなオコエの話に耳を傾けながら、私は入団1年目の日本ハム・中田翔を思い出した。'08年、身体が硬く、太り過ぎていた中田は、二軍で基礎体力づくりからやり直しを迫られた。

その中田をどやしつけるように指導していた二軍監督が、現ソフトバンク二軍監督の水上善雄。中田の成長をじっと待ち続けていた監督が、ほかならぬ現楽天監督の梨田なのである。

中田が一軍に定着したのは4年目の'11年。それまでの3年間、素質だけではプロで生き残れないと、中田は知らされた。いまのオコエに足りないのも、あの辛酸を舐めるような経験ではないか。

「ぼくは、野球を楽しみたいんですよ。真面目にやるのも大切ですけど」

そう明るく笑うオコエが、プロの顔になるのは何年後のことだろう。

(文中敬称略・了)

「週刊現代」2017年5月27日号より