血圧をめぐる大誤解〜「数値が下がればそれでいい」わけがない

あなたは薬を「誤解」している(1)
週刊現代 プロフィール

東京慈恵会医科大学名誉教授・細谷龍男氏は問題点をこう指摘する。

「確かにARBは従来品と比べると価格は高く、また使用の割合も多い。これは大学病院だけでなく、一般の病院でも同じような状況になりつつあります。

本当は安い薬をもっと使用すればいい。古い薬では十分に血圧を下げられないと言う人もいますが、きちんと服用して生活習慣を見直せば、8割の患者さんは、安い薬で血圧をコントロールできます。

特殊な高血圧に対して高い薬を使うのは仕方ないですが、最初から高い薬から入るのはおかしいと思います。

『原因はよく分からないけれど、とりあえずARBにしようか』という傾向があります。合併症などの検査を十分受けたうえで、薬について考えたほうがいいでしょう」

 

一方で、前出の岡田氏はこうも指摘する。

「ARBは血圧を下げ、脳卒中の発生率を下げますが、肝心の死亡率を下げるという科学的な根拠がないんです。

腎機能を保護する作用があると説明されていますが、そのおかげで寿命が延びるというデータはない。むしろ死亡率が下がらないのは、副作用の影響があるからかもしれない」

都内在住の50代女性が語る。

「80代の父親は降圧剤を飲むようになってから、朝からボーッとすることが多くなって、ふらつきもすると言って外出が少なくなりました。

そうするうちに、あるとき明け方にトイレに行こうとして、敷居につまずいて転倒し、右足を骨折してしまって……」

現在、この父親は寝たきり状態だという。

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「血圧を下げれば脳出血のリスクは下がる可能性があります。しかし、下がりすぎれば、低血圧の症状で体調が悪くなり、さらに言えば脳梗塞のリスクが上がります」(岡田氏)

内科医で神戸大学大学院医学研究科教授の岩田健太郎氏もこう言う。

「本当にその患者さんが血圧を下げるべき対象なのかという見極めが重要です。例えば、高齢者の方が血圧の数値が悪いからといって、血圧を下げる薬を服用すると、血液の流れる量が少なくなってしまうので、立ちくらみや目まいを起こす人も出てきます。

立ちくらみがひどくて私の外来にきた患者さんは、降圧剤をたくさん服用していました。しかし、それらの薬をやめても、血圧はさほど上がらず大きな問題にはならなかったのです」

年を取れば血管は固くなり、全身に血液を行きわたらせるためには、それなりの血圧が必要になる。特に脳は心臓から遠く、位置も上にある。そのため、血圧が下がりすぎれば脳に十分な血がまわらなくなるのだ。