ラスベガスの地下住民は、やっぱり実在していた…!

丸山ゴンザレスのクレイジージャーニー裏日記⑨
丸山 ゴンザレス プロフィール

将来について聞いてみた

「それまでの俺は真面目だった。酒もタバコもギャンブルも女もやらなかった。それが離婚で、築き上げてきたすべてが崩れたんだ。バカらしいだろ。だから、半分になった財産をこの街で全部使ってやろうと思ったんだ。使い終わったら死んでやろうかぐらいに思ってさ」

アメリカでは離婚するときに夫婦で財産を折半するため、事業を営む人が現金化することがある。ジョンさんの場合もそうであったようだ。

「でもよ、ここに来てギャンブルやって遊びまくるうちに人生が楽しくなってきた。だから、いまは自分の楽しみを優先させる生活をしているのさ。家賃なんか払うよりも他のことに金を回しているわけだ」

無計画なようできちんとした生活設計をしているジョンさん。だんだんヒゲなしサンタから、ヒゲなし社長に見えてきた。彼の人生のバックグラウンドを聞くことで、タバコやギャンブルなど遊興費に稼ぎをつぎ込む彼の生活スタイルも妙に説得力を持ってくる。

最後に将来について聞いてみたいと思った。

 

「これから先はどうするんですか? 最初に欲望を発散したわけじゃないですか」
「実は金を貯めているんだ。もうすぐ車が買える。そうすればここに暮らしながら気が向いたらドライブしたり、どっかに旅に出るのもいいな」
「この暮らしは続けるって……じゃあ、今の暮らしは楽しめているんですか?」
「当たり前だろ。ときどき娘に電話するんだが、俺がこんな暮らしをしているなんて想像もしていないだろうな。それでも、俺はこの暮らしをやめるつもりはないよ」

不思議な男だった。悲壮感は一切ない。むしろ生まれ変わったぐらいの勢いで今までとこれからを語る彼に圧倒された。ベガスのホームレスは、これまでに日本で取材してきたホームレスとは大きく違う。そんな不思議な感覚を持ってしまった。

このほかにも何人かのホームレスと出会った。それぞれに地下で生活する理由があった。元軍人、ギャンブル中毒、家庭崩壊……。様々な事情を抱えている彼ら彼女らに共通しているのは心の傷があること。そして壊れてしまったものを癒やして戻そうとするよりも、傷そのものに目を背けているように思えた。

と同時に、地下に暮らす人達を追いかけることは、アメリカの抱える闇に迫るヒントになるかもしれない、と思いながらラスベガスを後にしたのだった。

(明日公開予定の後編に続く)