「いいね!」が欲しい若者と「日本スゴイ」系番組に夢中の高齢者

承認欲求を充たしたい日本人
熊代 亨 プロフィール

「日本スゴイ」系番組を楽しむ高齢者

こうした、「群れる欲求」を充たせるコンテンツの動向として、ちょっと気になる動きがあります。それは、テレビでよく見かけるようになった、「日本スゴイ」系番組です。

私も、日本という国自体は好きなつもりですが、外国人に日本の長所を語らせるような番組構成には、恥ずかしさやあざとさを感じます。それでも「日本スゴイ」系番組がこれほど放送されているということは、それを楽しんでいる視聴者がいるのでしょう。

「日本スゴイ」系番組には、間口の広さがあります。「自分が日本を支えてきた」と自負している人はもちろん、どのようなコミュニティにも属さない人、SNSを使いこなせない人、流行作品を追いかけられない人でも、「日本」という括りには所属できます。

承認欲求や所属欲求を充たす機会の乏しい人でも、日常生活では誰からも相手にされない人でも、テレビを見ながら「スゴイ日本」に心酔しているうちは、「群れる欲求」が充たせるのです。

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伝統的地域を例外として、ほとんどの都市部や郊外にはもはや、地域社会の濃密な繋がりが存在しません。

私たちは地縁のしがらみから解放されて自由になりましたが、そのかわり、コミュニケーションする意思や能力を欠いている人は何にも所属できず、孤立するようにもなりました。

都市部のマンションや郊外のニュータウンで暮らす現代人には、所属するべきイエも、帰るべき故郷もありません。

とりわけ高齢者は、定年退職や病気、子どもの自立などによって、簡単に孤立してしまいます。

 

むろん、高齢者のなかにも、趣味や社会活動をとおして「群れる」欲求を充たせる人もいますし、SNS等を巧みに使いこなし、オンラインで承認欲求や所属欲求を充たせる人すら存在します。ですが、すべての高齢者がそのような“リア充”なわけではありません。

「日本スゴイ」系番組は、マンションやニュータウンで孤立する高齢者にも、所属欲求を充たせる機会を提供しているのです。年を取って孤立した高齢者には、承認欲求を充たす機会など望むべくもありません。

そんな彼らに、「群れる欲求」を充たすささやかな機会を提供しているテレビ番組は、多くの人が考えている以上に、世の中の役に立っているのかもしれません。

“「日本スゴイ」なんて格好悪い”と思う人もいらっしゃるでしょう。でも、全国に遍在する寂しい高齢者の社会的欲求に応えられるコンテンツ、「群れる欲求」に対応できるコンテンツが、他にあるものでしょうか。