フジ『ワイドナショー』が圧倒的人気を得た「これだけの理由」

松本人志「安心と信頼」の正体
前川 ヤスタカ プロフィール

「もう笑い飛ばしてもいいんじゃない?」

芸能人の復帰にあたっての弁解場所として、近年なぜこの番組が選ばれているのかというと、「必ず笑いに変えてくれる安心感」を背景に、極めて話しやすい空間であるということが大きいと思います。

番組で主にコメントするのは松本人志・東野幸治のメイン看板2人が中心で、芸能レポーターも同席しているもののあくまで後ろに控えるサブの役割です。

上記のベッキー・川谷絵音出演回は、このメイン2人に加えコメンテーターとしてヒロミも出演。ゲスい興味を隠さずに聞き出そうとする東野幸治、それを「何いきなり聞いてんだ」とかばうヒロミ、そして最後には必ず笑いに持っていく松本人志。

3人のベテラン芸人が小気味よくパスを回していく中で、渦中の芸能人も安心して話すことができるというサイクルがうまく回っていました。

東野幸治Photo by GettyImages

従来型のカメラフラッシュが点滅し怒号飛び交う記者会見が、童話「北風と太陽」でいう北風のやり方だとすれば、ワイドナショーは太陽のやり方で、視聴者の知りたい情報を引き出していくというわけです。

その結果、出演者のリラックスした本音が見えてくるとともに、最後が笑いで終わることで「ここはもう笑い飛ばしていいんじゃない」というメッセージも視聴者に送ることができています。

 

さらに言えば、時事ネタを扱っていながら、ワイドナショーが生放送ではなく収録であるというのも、より出演者の緊張を緩和させるのに一役買っています。

もちろんどれだけ時間が経っても笑い飛ばせないようなケースもあるので話題に即した対応は必要ですが、ベッキー・川谷の両出演回についてはこの番組の特性がとても機能していたように感じました。

テレビが主戦場でテレビに復帰する必要があったベッキーと異なり、川谷絵音はミュージシャンですから、わざわざテレビ番組で事の経緯を語る必要はなかったわけです。

場合によっては更なるイメージダウンにもつながる賭けでしたが、それでも彼がこの番組を選び、語ったことで少なからずイメージが回復し、本格的な活動開始へのけじめになったように思います(もちろん更に否定的な感情を持った人がいなかったとは言いませんが)。

昔はビートたけしがその役割

復帰しようとする芸能人を助け「過去のことなんて笑い飛ばそうぜ」と呼びかける役割を、約20〜30年前、自覚的に担っていたのはビートたけしでした。

1980年代から90年代にかけて日本テレビ系で単発的に放送されていた「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」は、芸人を爬虫類の檻に入れたり、プロレスラーと戦わせたり、人が乗っているバスを海に沈めたり、爆破したりとクイズとは名ばかりのリアクション芸の祭典でしたが、ここは芸能人の復帰場所としても機能していました。