文在寅が直面する問題の数々
5月9日、韓国では大統領選挙が行われ文在寅氏が当選した。通常であれば大統領選挙での当選者は、就任までに与えられた数ヵ月の時間を使って政府の構成や政策について準備することができる。
しかしながら、朴槿惠前大統領が弾劾により失職していた関係上、当選を決めた文在寅は即座に大統領に就任、執務を開始することになった。
当然のことながら、国務総理をはじめとする閣僚や政府主要ポストへの任命はまだはじめられもしてない。
この時点で依然として閣僚や政府主要ポストに居座るのは、イデオロギー的性向を真逆にする朴槿惠前大統領によって任命された人々であり、新大統領はこれを一つずつ入れ替えていかなければならない。
そうでなければ文在寅は自らの望む政策を何一つ実行できないからである。
そしてここで文在寅には一つの大きな障害が立ちふさがることになる。それは彼の所属する「共に民主党」が国会内第一党でありながら、過半数を有していないことである。
大統領の下に国務総理(首相)を置く韓国の政治体制においては、国務総理をはじめとする閣僚の任命には国会の同意が必要になっている。言い換えるなら、現在の状況において文在寅の指名した閣僚がその職に就くには、大統領選挙において激しく対立した他党の協力が不可欠になる。
とはいえこれはまだ問題の入り口でしかない。
閣僚に指名した人物に対して国会の同意を取り付けるためには、「過半数を得れば良いだけ」であり、そのためには共に民主党に属する120人の国会議員に加えて、残り「僅か」31名の支持を得ればよい。
現在の韓国国会においては共に民主党の左側に、比較的友好な関係にある正義党が6議席を有しており、右側には中道政党に位置づけられる国民の党が40議席を有している。
安哲秀が惨敗を喫した国民の党は求心力を喪失しつつあり、働きかけを行えば彼らの一定数が新政権に協力するであろうことは容易に予想される。