「人工知能が仕事を奪う」は本当か? いま人類が向かっている未来

「注意深い楽観主義者」であれ
金井 良太 プロフィール

これから求められるAIのガイドライン

金井 いま形成されつつあるグローバルなコミュニティのなかで、AI開発のガイドラインのようなものはできているのでしょうか。

例えば、誰かが汎用AIを作ろうとしたときに、そこに制限はかかるのでしょうか。人間を被験者とした心理実験での研究などでは、大学で倫理審査を受けるようなことが義務付けられていますが、AI研究でも同じような仕組みができるのでしょうか。

プライス教授 いくつかガイドラインはできつつあります。ひとつは最近1月に行われたアシロマ会議からうまれた「アシロマ23原則」です。これは、今後のAI研究の指針を与えるものです。

より詳細なレベルでは、IEEE(米国電気電子学会)がAIとロボット工学における標準化に向けてのガイドラインをまとめているところです。

このようにいくつかガイドラインを作成しようという試みはありますが、まだまだ時間がかかるでしょう。

研究が進み、どのようなことが技術的な実現可能性が明らかになるにつれて、特定の方向に研究を進めていくことが、安全性の観点からどこまで許容可能なのかについてガイドラインを確立していく必要がでてくるでしょう。

 

AIは本当に仕事を奪うのか?

金井 AIの話になると、よく職が奪われることが話題になりますが、この問題についてはどのようにお考えですか。これは短期的な課題に入ると思いますが、実際に心配している人もいると思います。

それから、職の問題は、現在、育ち盛りの子どもたちにどのような教育を提供するべきかという問題ともつながっています。AIが社会に浸透した未来の社会にむけて、どのような教育が子どもたちにとって意味があるのでしょうか。

プライス教授 これは素晴らしい質問です。もちろん、とても大きな問題でいくつもの考慮すべき要素があります。

ひとつは、純粋に経済的な富の再分配についての課題です。どうしたら、AIによって経済的な不平等をこれ以上広がることがないようにできるかということです。

AIを持ったロボットを所有する人がますます富を増大させることもありうるわけです。ここで、ベーシックインカムについての議論が重要になってきます。

もうひとつの要素は、より教育とも関係してきますが、どんなモノやコトが我々の人生にとって重要なのかという考え方を変える必要がでてくるのかどうかです。

発展した社会において、仕事というものが自分自身がどういう人物なのかと考える際に、職業というのは人生において大きな役割を占めています。今後は、この考え方から、ある程度は外れていく必要があるかもしれません。

自分自身のアイデンティティの持ち方が変わり、仕事に費やしていた時間が自由になることで、その時間をどのように埋めたいと考えるか、そのふたつの要素が絡み合っています。

一部の欧州の国の中で特に進んだ経済を持つ国においては、このような問題を先立って考えています。ヨーロッパの国の一部では、人々の労働時間を短縮しようとする試みが行なわれてきました。

そして、労働時間にも何時間働いて良いかの法的な制限を設けている国もあります。個人的には、そういった取り組みは歓迎すべきことだと思います。

これと関連したテーマとして、もっと長期的には、AIの役割自体が将来的にどうなるのか、ロボットと人間の共同生活は一体どのようなものになるのか、ということも考えていかなければなりません。

ひとつの可能性として考慮しておくべきなのは、何らかの方法で人間自身の知能も画期的に向上させる技術がでてくることです。思考能力も向上するかもしれないですし、自分自身をAIやその一部と直接つなぐことで、これまでの人間以上の知的能力が獲得できるかもしれません。

金井 この人間とAIを直接つなぐ話は、最近頻繁に耳にするようになりました。特に、最近イーロン・マスクが発表した「ニューラル・レース」では、脳に直接電極を埋め込んで、脳とAIが直接情報をやり取りできるようなブレインマシンインターフェースの実現を目指しています。

こういった技術を確立することで、AIの融合を果たし、人間の知能を格段に飛躍させるというアイデアもでてきていて、とても興味深いです。