マツコ・デラックスを現代の「最強神」と呼ぶべき、深淵なる理由

祭礼と女装の歴史にみる「双性原理」
三橋 順子 プロフィール

双性で異形ならパワー最強!

さて、皆さんは、神様というどんな姿をイメージするだろうか。キリスト教の十字架に架けられている「神の子」ではなく、日本の神様の姿を思い浮かべてほしい。

こんな感じだろうか? それともイメージが浮かばない?

京都市・松尾大社の男神坐像(平安時代)京都市松尾大社神像館

では、これはどうだろう?

神田祭の猿田彦神

「これなら知っている、天狗さんだ」という人も多いと思う。

正確に言えば、これは猿田彦神(さるたひこのかみ)といい、日本神話で天孫降臨(てんそんこうりん)の際に、天照大神(あまてらすおおみかみ)に遣わされた瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を道案内した神様だ。だから、祭礼の時、神幸行列の先頭を歩くことが多い。

高い背丈、赤ら顔、高く目立つ鼻、後の「天狗」のイメージで異形だ。

日本の神様のイメージには、松尾大社の神像のようなほとんど人間に近いものと、猿田彦神のようなあきらかに異形なものがある。

どちらが古いかというと、どうも異形の方が、元々の神様の姿のように思う。

たとえば、秋田県男鹿地方の「なまはげ」。

秋田県男鹿地方の「なまはげ」

長野県大岡村の「道祖神」。

長野県長野市大岡地区・芦ノ尻の道祖神祭り(長野県無形民俗文化財)

南に飛んで、鹿児島県トカラ列島悪石島の仮面神「ボゼ」。

鹿児島県トカラ列島悪石島の仮面神「ボゼ」

さらに南の沖縄県宮古島の「パーントゥ」。どれも、どう見ても異形だ。

沖縄県宮古島の「バーントゥ」

「なまはげ」と「道祖神」と「ボゼ」、なんとなく似ていないだろうか。北と南、遠く離れた地域の神様が似ているということは、これが日本の神様の原像なのではないかと思う。

つまり、日本の神は本来、異形なのだ。そして、その異形性が神のパワーにつながっているのではないだろうか。先に述べたように、通常と異なる姿であることが通常と異なる力の源泉になるという考え方だ。

そこで私はこんなことを考えた。

「双性」は神性に通じる、神は異形である。それを合体させると「双性で異形ならパワー最強!」。つまり、異形性のある異性装者が、もっとも「神」に近く最強なのではないだろうか。

現代の私たちは、ダブル・ジェンダーで美しい人を称賛するが、実はそれよりダブル・ジェンダーで異形の人の方が、パワーは強烈で神性が強いのではないだろうか。

ダブル・ジェンダーの美しい人たち(Miss International Queen 2015)

まあ、超絶的な美しさも、ある意味、異形なのだが。

で、思い浮かぶのがこの方。

マツコ・デラックス氏 photo by gettyimages

マツコ・デラックスさんが、現代のテレビ界でこれだけ大きな発言力をもっているのは、そのクレバーさに加えて、ダブル・ジェンダーでかつ異形であることが根底にあるのではないかと思う。マツコさんがスレンダーな美形だったら、これほどの発言力・影響力はなかったのではないだろうか。

マツコさんこそ、現代の双性×異形の最強神なのだ。