乙武 パラリンピックの未来についてお話をしたいのですが、私は以前から、いつの日かパラリンピックがなくなってほしいと思っているんです。
例えば水泳はクロールや背泳ぎという泳法で分かれています。あるいは柔道は体重別で階級が分かれていますね。
それと同様に、例えば100メートルのスピードを競う場合は、ウサイン・ボルト選手が出場する健常者の部があったり、義足の部や車椅子の部があったり、視覚障害の部があったりと、それぞれの競技が一つの大会で行われることが理想だと思っているんです。
ホームズ 今おっしゃったようなオリンピックとパラリンピックの統合は、十分に実現可能性のあるものだと思います。
ただ、今はまだそのタイミングではなく、実現するまでの道のりは長いと思いますよ。組織の運営や仕組みにその基盤ができていない。急いでしまうと、オリンピックの中にパラリンピックの一部の競技が含まれているだけのゲームになってしまう。
もちろん、私たちが望むのはパラリンピックの全ての競技がオリンピックの中に盛り込まれるものです。長い目で見れば、将来的には可能だと思います。それまで、オリンピックとパラリンピックの距離を縮めて、両方の競技が共生できるような関係まで持って行く必要がありますね。
乙武 最後に東京大会が成功するうえで、なにが大切だと思われますか。
ホームズ ロンドン五輪の次の開催地、つまりブラジルのリオ大会では、私たちが生み出したパラリンピックの変化を継続させることができませんでした。
これは、許されないことではありません。彼らには、私たちの大会から学べることや、活かせる知識があったはずなのですが…。また、リオ大会の組織のトップは私たちの運営したパラリンピックに敬意を示さず、力の入った運営を行いませんでした。大変残念に思っています。
次は2020年の東京五輪です。昨年日本を訪問しましたが、東京パラリンピックに向けて、課題があることは事実です。しかし、皆さん積極的でエネルギーがあり、協力的でした。
パラリンピック成功に必要なことは、人々の障害者に対する意識と理解を変えることです。日本人とパラリンピックの接点を作ることで、チケットを買ってもらえるようにすること。
あとは公共放送局であるNHKで放送されることも大切です。実際に見にいかなくても、日本にいるだけでパラリンピックを理解してもらえますから。
乙武 長いインタビューでしたが、丁寧に答えていただきありがとうございました。
ホームズ わざわざ来ていただけて、光栄でした。ありがとうございました。