近頃「白馬のお姫様」を待つ男子が急増している件〜恋しない若者たち

どうやって彼らと打ち解ければ良いのか
伊藤 氏貴 プロフィール

ともかく耳を傾ける

そうしたらあとは、「まさか」「ほんとかい」「そんな話、はじめて聞くよ」の3語だけを繰り返す――往年のハリウッドスター、ゲーリー・クーパーの女性にモテるための有名なテクニックだが、今や女子化した男子にも十分に使える。ともかく耳を傾ける。求められないかぎり、意見は言わない。

多くの若者は、誰に認めてもらえるかもわからぬまま、虚空に向かって日夜140字以内で呟き続けている。それよりは誰かにしっかりと受け止めてもらえる方がどれほど張り合いがあるか。

会話が止まりそうになったときには、質問する――相手に興味を持っていることを示せるし、相手はさらに自分の「個性」を発揮できる。

うまい質問が浮かばないときは「なぜ」と問う。ほぼどんな場合でもオールマイティな疑問符で、しかも話が深くなる。

でもとことんまでは話させない――何事も腹八分目。多少物足りなさの残るところで、相手にまた話す機会を持ちたいと思わせる。

 

というところで紙幅も尽きた。ここまではもちろんまだまだ心の扉を開いただけで、これからつきあいを続けていくなかで、叱らなければならないことや、いずれ独り立ちさせるために突き放さなければならないことも出てくるだろう。実った恋をどう持続させるかはまた次の問題だ。

ただ、まずはこちらから橋を架けなければはじまらない。遥か遠くなったと思った対岸にも、渡ってみれば昔と変わらないところもある。

ただ「ついてこい」と背中を見せるだけでは決して寄ってこない若者も、こちらから歩み寄れば、むしろそれを待ち構えていたのだと打ち明けてくれるかもしれない……かどうかまではわからないが、少なくともこの出会いは、『新明解』の定義する「恋愛」よりはよっぽど成功率が高いだろう。

漱石文学初心者もファンも楽しめる、歿後100年に読みたい一冊。文庫書き下ろし。
伊藤氏貴(いとう・うじたか)1968年、千葉県生まれ。文藝評論家。明治大学文学部准教授。麻布中学校・高等学校卒業後、早稲田大学第一文学部を経て日本大学大学院藝術学研究科修了。博士(藝術学)。2002年に「他者の在処」で群像新人文学賞(評論部門)受賞。テレビ番組制作のアドバイザーなども務める