村田諒太に聞いておきたかった「あのこと」、返ってきた「本音」

正直、物足りなさを感じていたから
森合 正範 プロフィール

井上尚弥、すごくないですか?

もう過去の話はいいだろう。来たるべき明るい未来の話を聞こう。

――ミドル級はこれまで数々のスーパースターを生んできました。レナード、ハーンズ、ホプキンス…。ボクシングファンにとって、ヘビー級と並んでミドル級は特別な階級です。

「うーん。でも、それはアメリカナイズされた考えですよね? 僕はそう思うんです。アメリカ社会の中であの階級がミドルだから彼らは特別視しているだけであって、どこの評価を受けるか。アメリカというものを主において伝統的に評価されている。軽量級の方がすごいとまでは言わないけど、井上尚弥なんて、すごくないですか?」

――井上選手は素晴らしい。もちろん希有なボクサーだと思います。

「ボクシングのレベルって、だいぶ変なふうにアメリカナイズされた先入観があると思うんです。以前、日本人のボクシングに流れてくる選手は他のスポーツに向いていない子たちだった。野球やサッカーをやってもどちらかというと鈍い。でも、いまは日本人でも大きくて動ける選手は増えている。そう思うとそんなに(日本人に難しいと)考えなくていいのかなというのがある」

村田諒太筆者撮影

――ミドル級で大変なのはボクサーではなくプロモーターや周囲だと話していました。

「そこにはボクシングマニアの僕がいるわけですよ。(WBO王者の)サンダースと対戦したくてもうまくいかなかった。(2階級王者の)カネロとか(元WBC王者の)チャベス・ジュニアとか、(3団体王者の)ゴロフキンとかいろいろやっている。ミドル級の世界戦は決まりそうで決まらない。それが永遠に続いてもおかしくない。

それなのにマッチメークの難しいミドル級でポンポンと決まった。これはありがたい。感謝しかない。そっちのプレッシャーの方があります」

 

いち早く海外に挑んだサッカーの三浦知良、メジャーリーグに挑戦した野茂英雄、テニスで世界の頂を目指す錦織圭しかり。道を切り開いた一人のスーパースターの存在が競技をがらりと変える。村田こそ、日本人のボクシングの見方を変えられる存在だと信じている。

――ボクシングの魅力を世間に届けられるという自負心はありますか?

「なぜ人気が出るのか。僕は共感力だと思うんです。最近、本当に共感力というのが人間の中で強いなと思っていて、マツコ(デラックス)さん、有吉(弘行)さんの人気があるのは、みんなが本当は言いたいけど言えないことを言うでしょ。

自分の代わりに言ってくれるから共感するわけです。年を取れば涙もろくなる。それは結婚、子育てとか死を経験するから。子どもがかわいそうなシーンで泣く。映画でおじいちゃんが死ぬ場面で泣ける。みんな共感だと思うんです」

――共感力をスポーツに当てはめるとどうなりますか。

「サッカーや野球はみんな経験があるから、あのプレーがすごいと共感できる。ボクシングって共感されるのは難しい。あとはボクサーでも長谷川(穂積)さんのような方。いろいろ乗り越えて、苦労されてきた。エリートよりたたき上げの方が共感されるのはそこなんでしょうね」

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スポーツコミュニケーションズ
近藤隆夫