# 文学 # 建築

文学と建築のあいだ 〜なぜまったく違うジャンルなのに響き合うのか

『建築文学傑作選』刊行記念特別対談
青木 淳, 平出 隆

なぜこの10編を選んだか

平出:刊行前、Twitter で収録作品当てクイズが行われていましたね。どの作品が選ばれてるのかを当てよう、という。

青木:作家は、かなり当たっていましたね。

平出:ただ作品は当たらない。ある作家名を挙げたツイートに対して、「その作家ならば違うこの作品を選ぶ」というふうに次々と答えておられて、青木さん、相当な読書家だなあとあらためて感心しました。

ある人に聞いたんですが、大学の建築学科ではとにかく本を読めとさんざん言われる。で、建築家の卵は文学部の学生より本を読むんだ、と。

平出隆平出隆氏

青木:設計ってけっこう煮詰まる仕事なんですよ。大学の課題では、たとえばある敷地に何平方メートルぐらいの何人家族の家を造りましょう、というようなお題が出る。それについて案を考えて先生に見せる。で、何週間も講評を受けながらまとめていく。

ふた月ぐらいずーっと一つのことを考えてると、だんだん頭が煮詰まってくるんですよね。そうすると気晴らしが必要で、映画を見るとか小説を読むとか、そういうことが確かに多かったかもしれません。

平出:そういうときに読むのは、建築あるいはその課題と関係があるものですか。

青木:あまりないです。気晴らしだから。ただ、そうやっていろいろ読んでると、気に入ったものとあまり気に入らないものが、やっぱりあって。で、どうも気に入る作品というのは、ある意味似てるのかなと思うようになって…。

どうですか、この10編の収録作品、似てませんか?

平出:私はむしろ、苦心していろんな角度からいろんな作品を集めたのかなあと。

青木:たとえば、あんまり筋らしい筋がない作品が多くないですか。芥川龍之介の「蜃気楼」なんか、話のない話ですよね。僕はどっちかっていうと、筋のない作品のほうに惹かれるようです。

 

平出:この10編の収録作品についての青木さんの解説が壮大な論文、卒業論文ぐらいの長さですね。大変だったでしょうね。

青木:卒業できたでしょうか、これで(笑)。

平出:この解説がとにかく楽しくて。解説ってなくてもいいようなものの場合も多いんですが、この本の場合は、この作品を選んだその心は、みたいなことが実に深い読み方とともに書かれているので、2倍3倍楽しめる。素晴らしい編集であり解説だなと思いました。

建築文学傑作選

アンソロジーであってもふつう読者は最初のページから読んでいく人が多いと思うし、本の場合はどうしてもそれが構えになりますが、この10編の並べ方、シークエンス、動線、そのへんの設計はどういうふうにされたんですか。

青木:最初のセレクトでは、今の倍ぐらいの数の作品を挙げました。でも文庫1冊分のページ数を考えると、そこからかなり絞らなければならない。その作業にひと月ぐらいかかりました。

平出:その間、もちろん建築の仕事もして?

青木:ええ。仕事のかたわら、その日の気分で「どれを選ぼうかな」って。

まずどの作品を選ぶかを考えて、同時に並べ方、バランスを考えました。当初の予定では「建築物が出てこない建築文学」でしたが、絞るためには何かもう一つ枠組みが必要になってきて、それならと逆に「建築物が出てくる作品」という条件に合致した作品に絞った結果、この10編になりました。