東芝大失敗の研究 〜組織は「合理的に」失敗する

まるで旧日本軍と同じ…
菊澤 研宗 プロフィール

この取引コストの大きさを考慮すれば、たとえ非効率的であっても伝統的製法に留まることが合理的となる。こうして、合理的非効率、つまり不条理が発生する。ガダルカナル戦で白兵突撃戦法に固執した日本軍は、このような不条理に陥っていたのである。

ガダルカナル戦の日本軍の不条理

ガダルカナル戦は、太平洋戦争における日本軍の陸戦の敗北のターニング・ポイントとして知られている。

戦後の研究によると、この戦いの敗因は、米軍が近代兵器を駆使した効率的戦術に徹したのに対して、日本軍が精神主義にもとづく非効率な夜襲による白兵突撃に固執し続けた点にある。日本軍は3回にわたって当時としては全く非効率的な銃剣突撃を繰り返し、完全に撃滅された。

 

今日、ガダルカナル戦では、1回目の白兵突撃作戦の後、日本軍はすぐに戦術を変更すべきであったとか、できるだけ早く撤退すべきであったとか、いろいろと批判的に議論されている。

しかし、当時の日本軍は白兵突撃戦術を簡単に放棄することはできない状況にあった。というのも、日本軍は、日露戦争以来、この戦術をめぐって、特殊な研究開発、特殊な教育、特殊な設備、特殊な人事、そして特殊な組織文化の形成に多大な投資を行ってきたからである。

それゆえ、この陸軍伝統の白兵突撃戦術を、一夜にして変更し、放棄すれば、多くの利害関係者はお手上げ状態になってしまうのである。したがって、この利害関係者を説得する交渉・取引コストは大きいものだっただろう。

このあまりに高い取引コストを考慮にいれると、白兵突撃戦術の変更はほとんど不可能だったのであり、撤退できなかったのである。むしろ、かすかな勝利の可能性さえあれば、たとえ白兵突撃が非効率であろうと、それを維持した方が合理的だったのである。

このような合理的メカニズムが、ガダルカナル戦での日本軍の非効率的戦術への固執行動の背後に潜んでいたのである。このガダルカナル化現象が、現代の東芝にも発生しているように思える。

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