元国税査察官が明かす税金滞納処分の冷徹な現場

正直者がバカを見てはならない
上田二郎

そのため徴収部は、本当にカネがない者と、根気よく向き合わなければならない(それにしても、脱税者が使ってしまったために税金を徴収しきれないとすれば、それこそ大きな不公平ではないだろうか)。

ところで、国税と地方税の両方に滞納があった時(多くの場合は滞納がある)には、差押先着手(先取り特権)の原則が働く。滞納処分に関しては、国税には国税徴収官という専門職がいるため、地方税職員ではとうてい歯が立たない。

なぜなら地方税の課税処理は多くが国税に連動していて、税務調査は国税が専権事項で行っている。そのため、地方税の差し押さえが国税に先んずることはない。

よって『ゼイチョー!』が動く時には、国税の滞納処分が終わった後の、いわば「でがらし」の場合が多いのだ。

そのため『ゼイチョー!』で描く滞納額は少額だ。しかし、だからこそ本当に困窮した人々の悲哀を垣間見る作品になっている。そして、滞納者に最も近いところにいる地方税職員の頑張りに光を当てた点も評価したい。

マンガの感想を求められた時、税務調査の頂点であるマルサの内偵調査をしていた経験から、ややもすると斜に構えていた。税の専門家の立場からすると、税法の適用誤りや現実ではあり得ない処分が描かれていて、首を傾げざるを得ないところもたしかにある。

だが、滞納処分という重い題材を扱いながら、単に税金徴収のサクセスストリーに終わらせることなく、徴収官と市民の心のふれあいを描いたヒューマン・ドラマとして読ませる作品に仕上がっている。だからこそ、多くの人の支持を得ているのだろう。

より多くの人びとに「税の公平性」を理解してもらうためにも、私がマルサの内情を明かした『国税局査察部24時』とともに、ぜひ今後の映像化を期待したい。

→『ゼイチョー!』第1話はこちらで特別公開中 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50622