元国税査察官が明かす税金滞納処分の冷徹な現場

正直者がバカを見てはならない
上田二郎

深い人間ドラマが展開する

「行間を読む」といった表現がマンガにも通じるのかどうかは分からないが、要所でのトラウマのカットインが、小説とは違った奥行きを感じさせる。

振り返ってみると私は、30年ほど(!)マンガを読む機会から遠ざかっていた。だが、これを機に他のマンガ作品を読んでみなくてはと思うような、深い人間ドラマが展開している。

たとえば、華子が初めて強制執行のメンバーに加わった現場で、幼き華子と同じくらいの男の子(将:しょう)が徴収官に立ち向かう。

将の母「どうしてこんなひどいことを あなたたち公務員でしょ!?」

徴収官「これがわれわれの仕事です。お宅だけ税金を免れるなんて甘いんですよ!」

将の母「こんなのメチャクチャよ!!」

泣き叫びながらも徴収官の前に立ちはだかって、将がママを守ろうとする。

「ママをいじめるなーっ。みんな出てけー!!」「ぼくんちから出てけー!!」

そこで、あのトラウマが華子の胸に突き刺さる。幼き華子は、ママを守ることができなかった……。

華子「饗庭さん。…無理です。私 できません」

税金を徴収するだけではなく、市民をけっしてどん底まで落とさないというコンセプトが各話に盛り込まれているようだ。

高圧的に差し押さえを行うというよりも相手の懐に飛び込んでゆき、彼らの隠された真実に迫る。

最後は、税金の減免で滞納者を助ける優しいストーリーになっているのも、女性作者ならではのものだろう。

いつしか、「トラウマは作者の実体験なのでは?」と(失礼ながら)思いながらページをめくった。