「手術前に『先生、これでひとつよろしくお願いします』と言って、袖の下を渡す患者さんがいますが、それによって明らかに対応を変える医者は確かにいます」
そう語るのは、新宿ミネルバクリニックの仲田洋美院長だ。
「私が知っている先生は、手術のたびに患者さんからおカネを受け取っていました。カネ欲しさに若手に執刀を譲らないことは日常茶飯事。術後もカネをもらった患者さんの病室には頻繁に通うのですが、そうでない患者には冷たかったですね。
愛人もたくさんいたようで、その先生と仲良くすると高級バッグを買ってもらえると評判でした」
昨今、国立病院では患者からの謝礼は原則禁止されており、カネを受け取る医師は減っているという。が、民間病院になると、まだこういった風習が残っていて、カネをもらうことが習慣化している医師もいるという。
医者は患者を差別しない――それは大きな誤解だ。医者も人間である以上、好きな患者と嫌いな患者がいて、対応に差が出るし、コネによって対応を変える医師もいる。
医療ガバナンス研究所の樋口朝霞氏が語る。
「自分より目上の先生から紹介された患者、特に院長からの紹介患者は、対応が手厚くなります。あとは芸能人や政治家など著名人の患者、次いでおカネをもらっている患者という具合です。
明らかにベッドサイドに行く頻度が変わり、場合によっては一時間近く話し込む医者もいます。その一方で、他の患者さんの時間はどんどん削られているのです」
さらに医師で医療ジャーナリストの富家孝氏は「マスコミ関係者には気を遣っている」と言う。
「医者はマスコミに悪く書かれるのを恐れている。最近聞いた話ですが、ある患者さんが大手新聞社の記者に付き添ってもらって、大病院に行ったところ、担当医は通常の診察室ではなく、わざわざ応接室で対応してくれたそうです。このように患者によって、対応を変えるのは医者の常です。
医者も人間なので好き嫌いはあります。だからこそ、かかりつけ医をもって仲良くなったほうがいい。緊急の場合も、仲の良い患者さんなら優先して診てくれますから」