命にかかわるとわかっていても…医者が判断を誤り続けるワケ

意外に身近なところで起きている
週刊現代 プロフィール

夜勤明けにミスが出る

このように専門外のことに手を出せば間違いが起きるのは当然。だが、専門分野に従事していてもミスは起こりうる。とりわけ大病院では、過酷な勤務体系が医療事故の引き金になりがちだ。

「通常勤務のあと当直で泊まり、また通常勤務に戻るという35時間勤務がいまだに存在する病院もあります。職場環境はブラックなんてものではありません。

仮眠は取りますが、睡眠不足で疲れが取れていないと当然、判断力は落ちます。私は内科なのでまだましですが、外科ならば最悪の状態で手術台の前に立たないといけない場合もある。当直明けは危険な時間帯ですね」(前出の内科医)

関西の大学病院勤務の看護師が語る。

「夜勤明けの医者が投薬の指示を間違えるなんてことはしょっちゅうあるので、私たちも注意してチェックしています。

しかし診断の場合は私たちも医者に口出しできません。

疲れていて集中力が落ちていれば画像診断だっておざなりになりがちです。先日も胸部痛があるという患者さんのレントゲンを撮ったのですが、何も見つからず、再受診時に肺塞栓が見つかったことがありました。明らかな読影ミスでした」

Photo by iStock

とりわけ夜間の救急外来は注意を要する。

「よほどの重症でない限り、医者や看護師は緊急外来に来る患者のことを『迷惑だ』と感じています。

骨折で来られても、整形外科医でなければレントゲンを見ても判断しにくい複雑なケースもあり、結局『翌日また来てください』と言われることも多い。

朝まで我慢ができるような症状であれば、夜間の受診は避けるに越したことはない」(前出の内科医)

また精神科の医者の判断ミスにも注意したほうがいい。精神科の外来患者には不定愁訴が多く、どこかが痛いと訴えても精神的なものだろうと判断されてしまうことが多いからだ。

「いつも精神科を受診している患者が胸が痛いと訴えたのですが、医者はまともに取りあわなかった。あまりに痛そうなので、念のため循環器科に回して造影CTを撮ったら、緊急治療を要する大動脈解離でした」(前出の看護師)

ただし「医者は必ず間違う」と、疑ってかかるのもよくない。治療を進めるうえでの信頼関係が醸成できないからだ。昭和大学横浜市北部病院の南淵明宏教授が語る。

「治療説明を録音したいという患者さんがいます。一度ではよくわからないから確認するために録音するというのはわかります。

でも、それを持って帰って家族に聞かせたいという場合は、こちらも戸惑います。第三者に判断させるつもりなのでしょうか。家族ならば、一緒に病院に来るべきです。

治療は医者と患者の共同のプロジェクトです。このキャッチャーは大丈夫かなと疑っていたら、ピッチャーも思い切ったボールは投げられません。最初から、なにかあったら訴えてやるぞというような態度で受診されては、良い手術はできませんよ」

このように過度の不信は治療の妨げになる。どうしても信頼感を抱けないような医者には、最初から治療を任せないほうが賢明だ。

 

「週刊現代」2017年5月20日号より