【日本人が犯人】カンボジア・人身売買事件の被害者が真相を明かした

「温泉で働くから、と母国を連れ出され…」
丸山 ゴンザレス プロフィール

偏見と固執

彼の助けを得たジェイさんは着の身着のままで群馬から脱出。そして、M氏が大使館や関係機関に掛け合っている最中に事件が発覚して、ジェイさんも無事帰国できたという。

この事件のあらましを聞くなかで、「海外で働くのに売春を強要されるようなリスクを考えないなんて甘い」とか、「日本の飲食店で働くならば、それは売春もセットであると分かるはずだ」と思う人がいるかもしれないと思った。実際、ネットの事件に対する書き込みの中にはそのようなものも散見された。

ここには、東南アジアの女性に対する偏見が混ざっている。

 

たしかに、身体を売ってでも海外で金を得るという出稼ぎは、いまだに東南アジア各地の女性たちに根付いている部分もある。だがそれは同時に、ひと昔前のステレオタイプの歪んだ東南アジア観だと言わざるをえない。まず大前提として、ジェイさんやほかのカンボジア人女性たちは、一定の教育を受けた一般市民である。売春があるかもという知識はあっても、最終的には拒否権があると考えるのが普通だろう。

ましてやプノンペンは未開の地の後進国ではない。むしろ国際都市としての色合いが強い街である。海外への出稼ぎは、生きるか死ぬかというよりも、よりいい暮らしを求めてのことである。そのあたりの感覚は、私たち日本人が海外に働きに行きたいと考えるのと同じようなものなのである。

開発が進むプノンペン

「日本人に騙されたけど、助けてくれたのも日本人。私は感謝している」

ジェイさんは明るい表情で話してくれたが、その心の傷がどれほどのものなのかは計り知れない。犯人を断罪して終わりにするのではなく、この事件が孕んでいる多くの問題について考えるきっかけにできればと思う。

明日公開予定の後編では事件の背後にあるものを読み解くべく、犯人グループとカンボジアで起業する日本人の現状について迫ってみたい。

(文中一部敬称略)