「フェイクニュース」を本物と勘違いしてしまう人に読んでほしい3冊

作家・塩田武士のメディア研究
塩田 武士 プロフィール

米国の報道が激変している

『英国式事件報道 なぜ実名にこだわるのか』で、イギリスの新聞メディアの勢いを鮮やかに描いた澤康臣氏の新作『グローバル・ジャーナリズム』も期待を裏切らぬ面白さ。

澤氏は共同通信記者として「パナマ文書」報道に携わった。世界から約四百人の記者が参加したスクープの舞台裏を紹介した第一章は、かなりリアルだ。

中央アジアやアフリカ南部の汚職事件を扱った第二章では、現地と欧州の記者が連携し、真実に迫っていく国際調査報道の醍醐味が味わえる。

だが、注目したいのは第三章以降だ。新聞の廃刊が相次ぐアメリカでは、1989~2014年の四半世紀に、新聞記者が約4割減少したという。

 

一方で寄付文化を背景に報道系のNPO法人が、スクープを連発。今や米報道の一翼を担っている。「ピューリッツァー賞」受賞で業界に衝撃を与えた「プロパブリカ」には、米有名紙のスター記者たちが続々と集まり、編集主幹の年収は3810万円。2000万円前後の高給取りも珍しくない、とは驚きだ。

フランスのニュース・メディアが、大物政治家の金銭スキャンダルを次々と暴き、韓国のNPO調査報道機関がサムスン電子会長の買春映像を報じるなど各国の新興メディアは威勢がいい。

一方、公的文書の開示に後ろ向きな日本では、いつの間にか匿名報道が当たり前になり、巨大キュレーションサイトが「マス」になって、硬派記事が行き場を失っている。頼りになる新興メディアの登場が待たれるが、そのためにはまず、大学や大学院でのジャーナリズム教育の充実が必須だ。

ジャーナリズムの原則』は言わずと知れた記者たちの世界的教科書である。自分が新聞記者時代に読んでおけば、と後悔している一冊だ。

本書では序文でジャーナリズムの原則九項が挙げられているが、特に「ジャーナリズムの第一の責務は真実である」「ジャーナリズムは第一に市民に忠実であるべきである」という原則は、情報を得る私たちが、記者の質を見極める際の物差しとなるだろう。

中ほどに出てくる「監視役の目的は、たんに権力の運用と行使を透明にするということを超え、その権力の影響力を知らせ、理解を広めることである」という言葉が心に響く。いつの時代も、社会は気付かぬうちに退路を断たれている。

週刊現代』2017年5月20日号より