週休3日、定年廃止で業績が伸びた!ある地方企業の「逆張り戦略」

アキ工作社・松岡社長に聞く【前編】
松岡 勇樹 プロフィール

大切なことなので社員には繰り返し言っているんですが、週休3日というのはただ休むための時間ではありません。

3日間を漫然と過ごしたり寝ていたりするだけなら、情報や知識も身につかないし、感覚も磨かれないし、人とのつながりもできないし、技術も上がらない。かえって劣化してしまいます。

社員が何らかの形で自分をスキルアップさせるように3日間を過ごし、そのスキルが結果として会社に還元され、会社の実力向上につながり、売上を伸ばし、ゆくゆくは社員自身の所得アップに至る──という考えに基づいて始めたのが週休3日制です。

だから最初に「社員が休みの3日間に活動する」という段階がないと、単に労働日数を短くして空白の時間を増やしただけになり、ジリ貧の悪循環に陥ってしまう。そこが、運用にあたって最も注意しなければならない点です。

言うまでもなく、会社では製造部門も重要です。製造では、一定の量を作るために一定の時間を必要とすることは変わらないので、週休3日にすると一番問題が生じるかなと予想していましたが、実際にやってみたらそうでもなかった。

短い時間の中で無駄を減らし、効率的な生産計画を立ててうまく作れるようになりました。嬉しい誤算でしたね。結果として、その年の売上は27%アップしました。

定年制を廃止

もちろん、問題がなかったわけではありません。

週休3日制に変えたと取引先に周知するのに半年くらい時間がかかりました。当初は金曜にしょっちゅう電話がかかってきて、お客さんに慣れてもらうのに時間が必要でした。ただ半年ほど経つと、取引先にも理解してもらえて、後はだんだんと周りの理解を得ながら定着していきました。

週休3日制と同時に、社外活動に対する手当を支給することも決めました。休日に地元でボランティア活動をしたり、自分でデザイン制作をしたり、展覧会に行ったり……といった社員の活動を金銭的にサポートするわけです。

「アキ工作社では3日も休めていいね」という声を聞きますけど、決して単なる休みではなく、スキルアップのために、個人の中で会社にいるときとは別のフェーズが高速回転している時間になっていれば、きちんと支援しますよということです。

それから、うちの会社では定年制を廃止しました。

国東も、日本の多くの地域と同じく高齢化がどんどん進んでいて、人手不足に陥っています。これから5年、10年、20年と時間が経つにつれ、状況はもっと深刻になり、60歳を超えた人も、場合によっては70歳を越えた労働力も必要になるでしょう。そういうことを考えて、定年制をやめました。

といっても、実は社内では54歳の僕が最年長です。なので、社員たちが60歳になるまでまだまだ時間はありますけど、今のうちから準備をしておこうという考えです。「元気でさえいればギリギリまで長く働ける」という仕組みを早めに作っておきたかったんですね。

 

社員の子弟も雇う

もう1つ、これはまだ正式にルールにしていなくてコンセプトの段階ですけど、まもなく「永代雇用」という制度をスタートする予定です。

定年制廃止の、さらにその先の段階の取り組みで、簡単に言うと、いま勤めている社員の子弟や、さらにその次の子供たちも将来的に雇用していこうというものです。

たとえば娘さんがいる社員に対し、「娘さんが学校を卒業して就職するとき、希望すればうちの会社に勤められるよ」と約束して、もし将来入りたいということになったら、それまでの学資などを補助する。

もちろん、社員の子弟にうちの会社への入社を要求する制度ではなく、入っても入らなくても構わないんです。もし途中で心変わりして「入らない」となれば、その場合は補助した学資を返してもらえばいい。そういう仕組みです。

僕たちのように地域に根差した会社というのは、地域共同体の一部なんです。だから、「共同体の中で助け合いながら生きていく」というのが会社の取るべき姿勢になります。

いまの世の中は、若い人たちにとって非常に生きにくい状況になっています。働こうとしても仕事の選択肢は限られている。だから、親と同じ会社で働けるような仕組みができれば、地域の若い人たちへの支援になると考えました。

会社側にとっても、親がずっと勤めていて信用できるのだから、子供もおそらく同じように信用できる人間だろうと判断し、低リスクで採用できるというメリットがある。永代雇用と名づけたのは、「永代供養」との語呂合わせです(笑)。

都会の人たちにとっては、江戸時代の封建制度とか徒弟制度のような古いシステムに見えるかもしれませんが、地方ではむしろ、新しくて有効なやり方ではないかと思います。僕が知る限り、日本でこういうことをやっている会社は他にありません。