「正社員」が危ない!高拘束、賃下げ、使い捨て…安心はどこへ?

ザマアミロと言っている場合ではない
竹信 三恵子 プロフィール

一方、日本は、非正規比率が4割に達し、同一労働同一賃金も確立していないため、「労働移動」すれば労働条件は下がりやすい。

その中での解雇規制緩和政策は、会社の責任を軽くして人件費削減を容易にしたり、転職支援ビジネスで人材業界を潤したりする効用はあっても、働き手にとっては貧困化への道となりかねない。

こうした人件費削減政策の中で企業の内部留保は積み上げられ、財務省の法人企業統計によると、2015年度は377兆8689億円と前年度から約23兆円増加し、4年連続で過去最高を更新した(下図は2016年11月6日付毎日新聞)。

社内に積みあがった利益を使って、いま大手企業は、相次いで大型買収に走っている。非正規化と「質としての正社員消滅」の中で実質賃金は容易に上がらず、冷え込んだ国内消費市場から利益の上がる海外市場へ、という理屈だ。

ところが、こうした大型買収が、最近では東芝によるウェスチングハウスや日本郵政によるトール・ホールディングスの事例のように、審査能力の不備などから巨額損失をもたらし、そのツケが社員に及んでさらなる正社員消滅を生んだ。

正社員消滅→内部留保の積み上がりと国内消費市場の冷え込み→海外企業の大型買収→巨額損失→正社員消滅、という悪循環に、私たちはさらされつつある。

 

「働き方改革」で給料は上がるのか

そうした状況を是正するために今回の政府の「働き方改革」が登場した、と考える人も少なくない。だが、それも危うい。

「働き方改革」の柱は、正規と非正規の同一労働同一賃金、残業時間の罰則付き上限規制が柱だ。ILO(国際労働機関)が推奨する国際基準では、職務が同一なら同一賃金とされ、スキル、責任、負担度、労働環境で分析し点数化して比較する客観的な評価方法を提示している。

だが、この3月に発表された実行計画では「同一労働同一賃金」について、業績・成果が同一なら基本給は同一、とされるなど、会社がどう判断したかで左右される主観的な評価方法が提案されている。

これによって、非正規だけでなく、正社員の賃金差も「何をしたか」ではなく「会社の期待に応えたか」で左右される度合いが強まることになった。そのため、会社の社員への支配はかえって極大化され、賃上げはさらに難しくなりそうだ。

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残業規制に関しては、現在、健康確保の目安とされている週15時間、月45時間、年360時間を大きく超える年最大720時間の残業や、繁忙期には1ヵ月で100時間未満、2~6ヵ月の平均で80時間以内という、過労死と認定される基準の時間まで働いてもいいことが労基法に書き込まれる結果となった。

これでは従来の週40時間、1日8時間という労基法の規制は大幅に相対化されることになりかねない。しかも、週単位や1日単位の残業規制は、今回、素通り状態だ。