「正社員」が危ない!高拘束、賃下げ、使い捨て…安心はどこへ?

ザマアミロと言っている場合ではない
竹信 三恵子 プロフィール

2013年3月の第4回産業競争力会議において、メンバーである大手人材ビジネス「パソナグループ」会長の竹中平蔵・慶應義塾大学教授(当時)は、「雇用調整助成金を大幅に縮小して、労働移動に助成金を出すことは大変重要。是非大規模にやって欲しい」とし、当時、1000対5だった雇用調整助成金と労働移動支援助成金の比率を「一気に逆転するようなイメージでやっていただけると信じている」と発言した。

竹中平蔵竹中平蔵氏 Photo by GettyImages

翌2014年には、545億円対301億円と二つの助成金の額は肩を並べ、2015年には193億円対349億円と逆転した。

転職支援を手掛ける人材ビジネス業界への利益誘導ではないかとの批判が上がった。その見方を裏付けるように、翌2016年2月22日、朝日新聞は、大手人材会社が王子ホールディングスの子会社に、政府の助成金をもとにした「戦力入れ替え」を指南し、「転職支援」を請け負っていたことを明らかにしている。

これに先立つ2014年には、都内で開かれた労働問題の集会で、人材ビジネスの誘いに乗って大手電機メーカーの退職勧奨を受け入れた社員が、転職先が決まらず、元の会社に低待遇の派遣社員としてあっせんされたという例も報告された。

正社員の追い出しビジネスが、政府の補助金で促進される事態が起きた、ということだ。

働き手の生存権を守るため、合理的な理由の証明が必要とされてきた解雇は、大きく変わりつつある。

たとえば、会社からの通告一つで入館カードを無効にされ、正社員が否応なく締め出される「ロックアウト」解雇や、達成が難しい目標を掲げた「業務改善プログラム」を受けさせられ、それが達成できないことを理由に首を切る解雇の簡易化が、大手外資系企業を中心に相次いでいるのだ。

 

同一賃金同一労働だとこうなる

社員を解雇しやすくして流動化を促す政策は、確かに北欧などでも進められている。だが、問題は、その土壌と目的の違いだ。

代表例としてしばしば取り上げられるデンマークは、グローバル化による産業構造の変動に対応するため、解雇規制を大幅に緩和し、社員を抱えきれなくなった業界から、よい労働条件で雇える業界へと移動を促す政策を取っていることで知られる。

しかし、デンマークの労働市場は無期雇用の社員がほとんどで、しかも同一労働同一賃金の仕組みが確立している。このため、労働移動しても、その先は安定雇用だ。

仕事が同じなら同じ賃金が原則なので、転職による賃金の値崩れも少ない。加えて、組織率7割の強い労組がパワハラ解雇などの不当な解雇を監視している。

また、ジョブセンター(日本のハローワークに相当)とも提携して解雇の日が来る前に転職先を探すことを目的に多額の職業訓練予算が計上されている。働き手を食べさせ続けるための移動、という目標がそこにはある。