震災で移転・閉校を余儀なくされた全寮制男子校の笑いと涙の青春

梅佳代『ナスカイ』サイドストーリー
現代ビジネス編集部

10年後見たら心臓痛いと思う

北村さんと栗林さんは2013年3月に卒業。「男子校最高でした。だから初めのうちは男子校病にやられながらも徐々に(笑)」(栗林さん)大学生活へとシフトした。でもナスカイ時代の友人に会うと、「全然違うスイッチが入る」(北村さん)。

それは今回、2人をインタビューさせてもらった時にもわかった。今、目の前にいるのはリア充を体現したようなイケメンだが、彼らのかけ合いを見て、かつては彼らも垢抜けないけど「キラキラ期間」真っ只中のナスカイ生だったことを感じ取ることができた。

梅佳代北村さんと栗林さんの卒業式の一コマ。 photo by Kayo Ume

ナスカイとともに21年間を歩み、北村さんや栗林さんをはじめとする多くの卒業生を送り出してきた塩田さん。ナスカイは閉校してしまったが、彼には夢がある。

「ナスカイを開校した当時は正直しっちゃかめっちゃかだったんです。それが15年経って、ようやく軌道に乗ってきたというか、あるべき姿が見えてきた。その矢先に震災に遭ってしまった。いつの日か、もう一度全寮制の中高一貫男子校を日本の教育にぶつけたいですね」

梅さんは2016年までナスカイ通いを続け、写真を撮り溜めた。閉校が迫り、写真集として1冊にまとめることに決めた。そのタイトルはまんま『ナスカイ』(亜紀書房)。2017年3月の閉校のタイミングに合わせて出版された。北村さんと栗林さんの初々しいショットも掲載されている。彼らが大人になってからこの写真集を見たら、一体どんな風に思うのだろう?

 

「きっと今はなんとも思わないんですよ、若いから。多分10年後とか20年後に見たら、心臓痛いと思う。恥ずかしいし、いい意味で。この時の方が良かったとは思ってほしくないですね」(梅さん)

女性が美しく成長を遂げた様子を比喩する「サナギから蝶になった」という言葉があるが、北村さんと栗林さんを見ていて、女性以上に男性の方が「サナギから蝶へ」と成長するのだな、と感じた。しかし「ナスカイマインド」は蝶となって羽ばたく今後も、彼らの人生の指針となるだろう。

朝も昼も晩も6年間いつもいっしょ、切なさが刹那ににじむ、笑い声が永遠に溶ける。