ネット大国中国で「チャイナドリーム」を追う人々〜ECは切り札か?

これが農村・農民を救うかもしれない
駒形 哲哉 プロフィール

ネット販売で「チャイナドリーム」追求

農村ネット販売のプレーヤーには、ネット販売の代理店を経営するパートナーと、もう一つネット販売プラットフォームに出店してネット販売を行う事業者とがある。

後者は目下、農民による創業(ビジネス)の主要な形態の一つになっており、特に若い出稼ぎ農民が創業するケースが報告されている。

アリババの「タオバオ」をプラットフォームとするネット販売を展開する事業者が集中している農村を「タオバオ村」と呼び、2016年現在、約1300ヵ所形成されている(なお、「タオバオ村」には、活発なネット販売従事者が当該農村戸数の1割以上、ネット販売年間取引額1000万元=約1億6000万円以上といった定義がある)。

浙江省の義烏は世界最大の雑貨製品の集散地であり「100円ショップの郷」として有名な地域だが、この地域に「タオバオ村」の5%が集中している。

仕入れの利便性を背景に、各地からネット販売事業にチャレンジする若い農民が集まってきて、ある者は成功を収め、ある者は敗れて去っていく入れ替わりの激しい競争が展開されている。

彼らは仕入れリスクをとって商材を仕入れ、初めは価格を抑えてアクセス順位を上げたり、プラットフォームに広告費を支払いトップページに表示したりして、何とか顧客をひきつけようとしている。

中国では国を挙げて創業が奨励されており、自営業を含めて事業者数が1日に4万5000社増えているというが、ネット販売は間違いなく旺盛な起業の一つの業態となっている。

 

中国版「一村一品」の展開

ネット販売は結局、アパレル・靴、雑貨、寝具、ハウスウェア等の工業製品の選択と調達、物流の利便性がモノをいう。

上記の「タオバオ村」の多くはそうした条件の整った浙江、福建、広東、江蘇、山東等、沿海地域に集中する。また、帰郷してネット販売に挑戦する場合もこうした地域が多い。

ただし、経済開発の遅れた農村地域の経済振興にとっては、ネット販売による各地の特産・名産物の拡販が課題だ。

ネット販売の効果と課題を示す例を紹介しよう。

内陸・江西省瑞金にネット販売で全国区になった「廖おばあちゃんの塩漬卵」という地域名産物がある。87歳になる廖秀英さんが16歳の時から塩漬卵を作りはじめ、独自の製造ノウハウで地元では有名な加工食品となっていた。

報道によって情報が異なるが、2015年に孫娘のサポートで、アリババのネット販売プラットフォームに「廖おばあちゃんの塩漬卵」を出店したところ、3倍の値段にしても需要量がそれまでの月に数百個から一日に数百個に拡大したという。

そこで地元の郵便局と地元自治体(政府)のサポートで協同組合を設立し、組合に加入した地域の農家が廖さんから製法を教わり、増産体制に入った。これが地元に雇用拡大と所得増加の効果をもたらしたことは事実である。