テキサス大学教授で、同誌の副編集長でもあるシンシア・マルロウ医師が言う。
「確かに現代の食生活ではビタミン不足の人が増えています。だからといって、マルチビタミンのサプリを摂るのは間違いです。
その人にどんなビタミンが不足しているか検査もせず、個々人の体調を無視してマルチビタミンを摂り続けても意味はない。それどころか、飲みすぎると害になる可能性すらあることがわかりました」
マルロウ氏によれば、ビタミンAやビタミンE、ベータカロチンなどは、体内の酸化を防ぐ抗酸化作用があり「アンチエイジングやがんの予防にもつながる」と宣伝されているが、摂取しすぎると「若返るどころか、がんを促進し寿命を縮める」危険性があるという。
サプリメントに詳しい銀座東京クリニックの福田一典院長が解説する。
「抗酸化作用があると宣伝されているサプリは老化を防ぐと言われますが、それは激しい運動をして活性酸素がたくさん出た場合には多少は効果があるかもしれない、という程度の話です。運動もせずに抗酸化サプリを飲むと、逆に健康を害する。
身体というのは多少の酸化傷害があると、それを消去するために、自分の体内で抗酸化酵素を作ります。ところが抗酸化サプリを飲むと、そういう身体の働きが無くなってしまい、がんの発生を促進するのです」
アレルギーを引き起こす
日本では早くから健康食品として製品化され、「がん予防にもなる」と喧伝されるクロレラ。だが、実は国民生活センターの健康被害報告では上位にのぼる。
『病気になるサプリ 危険な健康食品』の著者で法政大学教授の左巻健男氏が語る。
「動物実験の結果しかないため、がんに対するクロレラの有効性を示した科学的データはありません。クロレラは細胞壁が非常に硬いため消化分解しづらく、過剰に摂取すると肝機能障害を起こすことが分かっています」
近年「元気の源」「疲労がとれる」サプリとして一気にブームになったのが、コエンザイムQ10だ。
エネルギー代謝を活発にして、疲労回復や美肌効果、加齢による体力の衰えを回復させる効果が期待できると喧伝されているが、体内のコエンザイムQ10が減ってしまった後、外から補給したとしても、本当にエネルギー生産が活性化されるかは分かっていない。
男の夜の営みにビンビン効くというマカはどうか。
「これも科学的な有益性は認められていません。しかも粗悪品が非常に多い。'08年に愛知県の食品販売業者が販売したマカサプリが原料の段階で放射線照射されていたことがわかり、回収命令が出たことがあります。
最近、個人輸入でサプリを購入する方が多いのですが、マカなどの男性機能改善系サプリを調べたところ50種類中35種類にバイアグラの成分が入っていたという事例もあります。
バイアグラは医薬品であり副作用も多く、心臓への負担も大きい。だから、男性器機能改善系のサプリは極力、個人輸入で買うのは避けたほうが良いでしょう」(前出の柴田氏)
お肌がプルプルになると言われ、アンチエイジングのサプリとして女性に親しまれるコラーゲン。だが、このコラーゲンもまた経口摂取による効果は認められていない。
コラーゲン鍋を食べた後、肌がプルプルになったという人がいるが、それは思い込みにすぎないのだ。