屈辱のオリックスナイン「宮内オーナーのひと言」が闘志に火をつけた

「言われっぱなしじゃ終われない」
週刊現代 プロフィール

野手がT-岡田なら、投手でそれをもっとも胸に刻んでいるのが、エースの金子千尋だ。

ソフトバンクと最後まで優勝を争った'14年にエースとして活躍。リーグ最多の16勝、防御率1・98と抜群の成績で沢村賞も獲得したが、'14年のシーズン後、右ひじを手術してから、本来の球のキレが戻らず、2年続けて7勝に終わっている。

昨年の春の宮崎キャンプ中には、宮内オーナーから年俸5億円もらいながら、十分な成績を残せなかったことに対し、「(年俸の)価値の部分を表してもらわないと」と厳しい注文をつけられた。当時の担当記者が振り返る。

「年俸3億5000万円の中島裕之とともにゲキを飛ばされました。2人がコメントを残すことはなかったけど、年俸分働いていない自覚はあるから、本人たちは痛かったでしょう」

通算284勝をあげ、今春のキャンプでオリックスの臨時コーチをつとめた阪急OBの山田久志氏は、エース金子の変化を感じ取っていた。

「金子は福良監督とわざわざ時間をとって2人で話し込んでいました。元々プロ野球界を代表する投手ですし、力そのものは十分にある。体調管理さえしっかりできていれば、勝ち星の計算ができる。

私は金子に『お前がリーダーとしてやれよ。自ら捕手を育てるぐらいの気持ちでやりなさい』という話をしたんですが、私が臨時コーチとして滞在中、普段は本当に寡黙な彼のほうから近づいてきてくれた。

『今年は、少々体調が悪くても、好不調があっても、エースの自覚をもってやっていきたいと思います』と決意表明をしてくれたんです。周囲でそのやりとりを聞いていた球団のフロントが目を丸くしていたぐらいです」

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呪縛からの解放

そんな金子の意識の変化に感化されるように、26歳の西勇輝の目も覚めた。9日の日本ハム戦の完封勝利がその証拠だ。八回まで130球近く投げながら、西は「中継ぎ陣を休ませたい」と志願して九回のマウンドにあがった。154球もの熱投だった。球団関係者が明かす。

「これからの長いシーズンを考えれば、最終回は抑え投手の援護を仰ぐのがむしろ、当然の場面です。でも西は今季初登板となった2日の楽天戦で、リードした状況で後続の投手にバトンを渡しながら、その後、逆転されてしまい、勝ちがつかなかった。

よほど悔しかったのだと思います。西の今季にかける意気込みを見て、結果的に福良監督が彼の意をくんだのだと思う」

 

オリックス好調の陰には、今そこにいない男の存在がある。今季FAで阪神に移籍した糸井嘉男だ。4年前、日本ハムから電撃トレードされてオリックスにやってきた糸井は、その陽気なキャラクターも手伝って、たちまちチームの顔になった。しかし、その顔はひとつの弊害も持っていたのだ。在阪スポーツ紙デスクが明かす。

「糸井が抜けたことでチームがまとまった面はある。糸井は天才的なセンスを持っているけど、チームプレーのできる選手ではなかった。言葉の通じない天才を機能させるために、福良監督はかかりきりになっていた部分もありましたからね」

それを宮内オーナーが容認していた節もある。

「オーナーの中には、いまだに優勝した当時の仰木彬監督とイチローの像がある。それを追い求めているんです」

天才性を帯びた糸井は、イチローほどではないとしても、オーナーにとって「夢」を見られる選手だったのだろう。しかし、糸井はいなくなり、天才の呪縛はとけた。あとは現実的な「勝利」という結果を出すしかない。

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