「大子は日本一だっぺえ!」ある住民は自信満々に言う。だが、その後の説明が全く聞き取れず、記者は途方に暮れた……。いま注目を浴びている「奥茨城」に、実際に行ってみた。
「ささ、のべずりあがって、お茶でもずんずりなんしょ」と言われて即座に意味が分かる人は、いったい日本全国でどれだけいるだろうか。
「今日はノヤノヤーってすんだねェの」
「それ、あいしょうし!」はどうだろう。
ちなみに正解は順番に、
「さあさあ、上がってお茶でも飲んでください」
「今日は蒸し暑いねえ」
「ジャンケンポン!」である。
これらはすべて「奥茨城弁」だ。
いま、茨城県が熱い。それも水戸やつくばといった有名どころではなく、福島との県境、「奥茨城」が注目を浴びている。
その理由は、NHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』。有村架純が演じる主人公・谷田部みね子は、茨城県北西部の小さな村・奥茨城村で暮らす高校3年生だ。時代設定は1964年秋、あの東京オリンピックの直前である。
劇中、のっけから繰り広げられる母・美代子(木村佳乃)との「茨城弁丸出し」の会話に、驚いた視聴者も多かったに違いない。
〈みね子「お母ちゃん、卵五づだよ、今日は!」
美代子「ええ、すごいねえ!頑張ったねえ!よかったねえ」
みね子「あ、お母ちゃん、一個、お弁当にゆで卵入っかなあ」〉(第1話より)
茨城生まれの主人公は朝ドラ史上初。茨城弁がドラマで大々的にお茶の間に流れたのも、この『ひよっこ』が初めてではないだろうか。
兵庫県出身の有村が懸命に茨城弁を話す姿には、
「かわいい」
「聞いてるとなごむ」
と、全国から好意的な感想が寄せられている。だが一方、茨城県民からだけは、厳しいダメ出しが来ているという。
「しっくりこねェな」
「甘ェ。ほぼ標準語だ」
「本物はもっときったねっぺ(汚いぞ)」
そう、冒頭でも述べた通り、真の茨城弁とはこんな生やさしいものではないのだ――。