6階級制覇王者パッキャオはなぜいまさら無名選手と戦うのか

ジェフ・ホーンって誰?
杉浦 大介 プロフィール
(去年のパッキャオ対バルガス戦はラスベガスのトーマス&マック・センターで開催。今年11月にはパッキャオは再びベガスでの試合を予定しているとも言われる)

アラムのプランにどれだけリアリティがあるかはわからない。PPV、プレミア・ケーブル局での放映でないとすれば、パッキャオ、トップランクは当面の減収を覚悟する必要がある。ただ、オーストラリアのテレビ&入場料収入でカバーできるし、何より、地上波で放送されれば、普段はボクシング視聴に積極的ではない一般のスポーツファンにもアピールできる。

トップランク自前のPPVで放送されたバルガス戦の購買数は約30万件だったが、地上波なら視聴者数はおそらくその10倍以上。これまで”金を払わなければ見れない”ボクサーだったパッキャオが、より多くのファンに無料で試合を見せることの意味は大きい。ホーン戦での儲けはそれほどではなくとも、その後に企画されるであろうビッグイベントに間違いなく好影響を及ぼすはずである。

これも今後の商品価値に関わってくることだが、試合の見どころはパッキャオの久々のKO勝利できかどうかに尽きる。かつては全階級屈指のデストロイヤーだったサウスポーだが、KOは2009年のコット戦が最後だ。以降は判定勝ちが続き、特に近年は技巧派傾向に拍車がかかっている感がある。

ただ、昨年の2戦でもダウンは奪っており、パワーを完全に消失したわけではない。経験不足のホーンが相手なら、実に7年半ぶりとなるストップ勝ちの可能性もあるだろう。

繰り返すが、去年もティモシー・ブラッドリー、バルガス(アメリカ)という2人の実力者を下し、依然としてトップレベルの実力を証明した後で、ホーン戦は少々残念なマッチメークではある。だからと言って、”Stay Busy fight”は単なる消化試合だとは限らない。地上波にせよ、プレミアケーブルの通常放送だろうと、PPVより多いテレビ視聴者の前で、パッキャオが久々にど迫力のファイトを披露できれば……。

そんなシナリオが現実のものとなれば、”その後”への期待感は改めて膨らむ。テレンス・クロフォード(アメリカ)、あるいはアミア・カーン(イギリス)、エイドリアン・ブローナー、キース・サーマン(ともにアメリカ)といった強豪との対戦を望む声もこれまで以上に出てくるはず。今戦が興行&試合内容の両面で成功に終われば、終盤に差し掛かったパッキャオのキャリアにまた新たな楽しみが生まれるに違いないのである。

(無敗の2階級制覇王者クロフォードとの新旧戦は実現するのか Photo By Ed Mulholland / Top Rank)