ダ・ヴィンチが嫉妬するかもしれない、人体の精妙さと美しさを知る本

新しい人体の教科書
山科 正平 プロフィール

構造と機能は表と裏の関係

その第1が“からだはひとつのものである”との、著者の人体観を披瀝させていただいたことだ。ひとつひとつの細胞からはじまり、からだの構成要素となる器官の全てが、全身の中の一員として他の成員と精密に協働して、決して統制を乱すことはない。

そのため、どれもがからだというステージで役割を漢ずる一役者である。舞台の成否は役者の協働作業で決まりながらも、決して失敗はない。これがからだのもっとも優れたところで、この点をとくにお伝えしたいと考えた。

その第2に、器官が生まれてくる経過を踏まえて、解説を試みたことである。これにより、複雑極まりない人体や器官の成り立ち、相互の関連をかなり単純化して理解してもらうことができるばかりか、生物進化の歴史の中にある自分であることを強調したいと考えたのだ。

第3に、器官の働きを細胞活動の一環として解説し、機能が発現する場として構造体を理解していただくように努めたことである。「構造と機能は1枚の紙の表と裏の関係」というのは生命体を考えるときの鉄則だ。

表と裏をつなげる細胞生物学はこの20~30年間に大きく進歩し、いまも発達を続けている。その一端をお知らせしたいとの目論見もあった。

こうした著者の意図をできるだけ忠実に読者にお伝えするため、本書では平明な記述に加えて、わかりやすく的を射たカラフルな挿画を多用したことにも大きな特色がある。いずれもイラストレーターの金井裕也、千田和幸、本庄和範の三氏の手による、科学の啓発にふさわしい力作である。

また同じ図でも見る視点を変えて再掲載し、それにより理解が深まるような配盧もした。図版を見ているだけでも十分に人体を堪能してもらえるに違いない。

本書は、からだに興味を持つ方ならどなたにでも気楽に読んでいただけるはずだ。予備知識もいらない。必要なのは“好奇心”と“興味”だけである。

学生、社会人など、はじめてこの道に分け入る一般の方々を想定して、興昧の誘発にも努めた。小宇宙に分け入って、自分のからだに寄せる発想を少しでも発展させていただけるなら、著者冥利に尽きるところである。

同時にまた、本書は看護・介護、臨床検査、薬剤師、栄養士など、医療関係の従事者はもとより、これからその道を目指す学生諸君には、教科書として活用していただけるはずだ。

医痕にかかわる方々にとって、人体の正常な構造と機能、それをベースにした疾病の成り立ちは基本的な素養である。この一冊で、導入から国家試験対策まで、十分に対応できるはずだ。

本書により、自分のからだへの関心を少しでも高揚させ、玉石混淆する

情報の山々を少しでも的確に見透していただきたいものだと念願している。

著者 山科正平(やましな・しょうへい)
北里大学名誉教授。1941年北海道生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、同大学難治疾患研究所、京都大学助教授を経て、1981年より北里大学医学部教授として、解剖学教室を主宰。研究領域は顕微解剖学。電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡など多彩な顕微鏡法を駆使して、細胞分泌の機構、分泌器官の組織発生機構の解明にあたる。1994年、日本顕微鏡学会賞(瀬藤賞)受賞。日本顕微鏡学会会長の他、日本解剖学会、日本組織細胞化学界の運営にあたる。2007年、北里大学を定年退職後、青山学院大学、埼玉医科大学で客員教授を務める。難解な解剖学の平易かつ明快な講義には定評がある。著書に『新・細胞を読む』『細胞発見物語』(いずれも講談社ブルーバックス)ほか。
カラー図解 新しい人体の教科書 上

山科正平=著

発行年月日: 2017/04/20
ページ数: 360
シリーズ通巻番号: B2013

定価:本体  1680円(税別)

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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)