急増する「死後離婚」息子が死んだら、嫁が財産持って遁走する

舅姑の面倒なんか見たくないから籍を抜く
週刊現代 プロフィール

嫁の本心などわからない

ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏は、「死後離婚に関する相談が急増している」と語る。

「『夫が亡くなった後、夫の親族と縁を切っても生活できるだろうか』という具体的な相談がかなりあります。

実際、姻族関係終了届の提出数は、'05年度には1772件だったものが、'15年度には2783件に増えています(法務省の戸籍統計)。

姻族関係を終了してまで夫の親族との関係性を断ち切りたいというケースは、よほどの理由があるはず。色々トラブルがあって、疎遠にはなったけれど終了届までは出していないケースはその数倍、数万件はあるでしょう」

嫁はそれでスッキリするかもしれないが、一方で息子の死後に遺された親としては非常に複雑な気持ちだろう。これまで厳しいことを言ったかもしれないし、迷惑をかけたこともあったかもしれない。

しかし、それも家族の一員と思ってのこと。その分、経済的にも協力してきたし、気も遣って生きてきた。嫁として家に入ったのだから、運命共同体じゃないか――そう考えたくなる気持ちもわかる。だが、今時の嫁たちは、そのような義父母の気持ちを理解してはくれない。

「死後離婚に関しては、女性と男性では受け止め方がまるで違います。女性は自分自身の問題としてリアルにとらえるのに対し、男性は『うちには関係ないな』と他人事で片づけようとする。

死後離婚が増加している背景としては、テレビや雑誌などのマスコミで取り上げられることが増えたこともあります。また、高齢化が進んで、介護の負担が増えてきたことも一因です」(前出の中村氏)

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いまのところは、息子夫婦とそれなりにうまくいっている――そう信じていても、嫁の本当の心のうちはなかなかわからないものだ。「子供がまだ小さいから」「いまは経済的に自立できないから」といった理由で我慢しているだけで、「機会があれば……」と絶縁のタイミングを虎視眈々と狙っているかもしれない。

山下まどかさん(38歳、兵庫県在住、仮名)もそんな一人だ。

「夫は一回り年上なのですが、いまだに毎日のように親のところに電話していて、親離れ、子離れができていないんです。義父母は近所に住んでいるので、なにかあればすぐに家に来て口出しします。こないだは『部屋に荷物が多すぎる』と、勝手に家具の配置まで変えられてしまいました。

以前、夫に少し離れたところに引っ越したいと切り出したときも、それを聞きつけた両親が怒って、私の両親に電話をして『鬼嫁』『私たちは騙された』と一方的にまくしたてられた。いずれは同居して老後の面倒を見てもらおうと思っているようです。

実は夫は糖尿病を患っていて、健康といえる状態ではありません。もし、このまま私と子供たちだけが残されたら、あの義父母にこれまで以上に干渉されるかと思うと、ゾッとします。それだけは、絶対にイヤ。もし夫が早く亡くなったら、義父母とはきっぱり縁を切るつもりです」

このような気持ちで、死後離婚の計画を立てている嫁は、実は意外なほど多い。

だが、そもそも嫁が舅や姑のことが好きではないからといって、簡単に扶養義務から逃れられるのだろうか。相続問題に詳しい弁護士の理崎智英氏が解説する。

「夫が先に死んだ場合、民法上はその妻を含む3親等の親族までは両親の扶養義務を負う場合があります。

しかし実際に扶養義務を負うのは家庭裁判所が妻に『両親を扶養せよ』という審判を出したときの話です。それがない場合は、嫁が舅や姑の面倒を見たり、扶養したりする必要はありません。しかし、実際には同居している嫁には扶養義務があると誤解している親や嫁が多いのも確かです。

もし家庭裁判所が妻に扶養義務があると審判を下したとしても、姻族関係終了届を出して、死後離婚をしてしまえば、その審判は無効になります。

ただし、亡くなった夫とのあいだに子がいれば、それは祖父母と親族関係がありますので、子供のほうが扶養義務を負うことになりえます」

 

伝統的な家族観から見れば薄情の極み、といえるかもしれない。だが、法律の上では、「嫁はいつでも義父母から逃げたいときに逃げられる」と定められているのだ。

もし将来、息子の嫁に自分の老後の面倒を見てほしいと考えているのならば、それは相手にとって何の法的義務もないことを、理解しておいたほうがいい。