入社3日目で会社を辞めたくなった人へ教えたい「仕事の基本」

「新人」を3回経験した私だから分かること
戸塚 隆将

「努力」と「運」を切り離す

振り返りをすると自分の努力不足ではなく、ただ単に「運」に恵まれなかったための失敗もあるとわかります。成功も失敗も、「運」と切り離してとらえる癖をつければ、何ごとにも平常心で臨めるようになるでしょう。そのことを教えてくれる、メリンダ・ゲイツ氏の言葉を紹介します。

「There is another essential ingredient of success, and that ingredient is luck──absolute and total luck.(成功にはもう1つ、不可欠な要因があります。それは運──絶対的で総合的な運です)」

これは2014年、スタンフォード大学の卒業式でメリンダ氏が語った言葉です。彼女は世界一の富豪でマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏の妻です。世界最大の慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の共同会長でもあります。

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彼女は卒業生たちに向かって、夫の成功要因として「ハードワーク」「リスクテイク」「乗り越えた犠牲の数々」という3つの要素を列挙します。

そして4つめに「運」を挙げました。幸運の要因はしばしば、「本人の日頃の努力が呼び込んだ結果である」と説明されます。しかしメリンダ氏は、「幸運」は「努力」から独立した要素であるといい、「運が人生を左右する」という事実を直視するよう卒業生たちに呼びかけます。

何かを達成したとき、すべてを自らの努力の帰結としてとらえると過大評価になりかねません。一方、チャレンジが失敗に終わっても不運の要素がどれくらいあったかを冷静に見つめられたら、極端な自信喪失に陥ることもなくなるでしょう。

 

ポジティブ思考に「振り返りノート」

「振り返り」をおこない、「努力」と「運」を切り離して考えるための方法を最後にご紹介します。私はゴールドマン・サックスを退職し、HBS留学に向けた準備をしている頃からノートでの振り返りをおこなっています。

たった1冊のノートと1本のペンですが、気持ちの整理と課題解決を助け、ポジティブ思考のサイクルをつくり出すのに役立っています。

具体的な方法はこうです。週に一度、30分から1時間ほど、取り組んだ仕事や起こった事実を思いつくままに書き出します。時系列である必要はありませんし、些細なことでもかまいません。カフェなどでコーヒーを飲み、リラックスしながらノートにペンを走らせていきます。

すると、自分の力不足で失敗ばかりだったと思っていた一週間の中に、うまくいったことが一つは見つかるのです。「10敗」のイメージだったものが、「1勝9敗」だとわかります。

さらには、運によってうまくいかなかったことを引き分けと定義すれば、実は、その1週間の成果は、「1勝4敗5分」くらいに変わることもあります。

「失敗ばかりに思えたこの一週間の中にも前進はあった」。その発見が小さな自信や意欲を生み、つらい時期を乗り切るポジティブな力になるのです。

私の愛用する「振り返り」ノート。表紙が固くて持ち歩きやすい

一流人たちは、先に挙げたような、考えてみればあたりまえに思える仕事の基本を実践することで、偉大なパフォーマンスを生み出しています。一つひとつの仕事の基本は小さなものですが、それを地道に徹底的に積み上げるからこそ、かれらは一流人たり得るのです。

自分は一流人のようになるのは無理だと思っていないでしょうか。スーパーマンのように見えるかれらですが、ときには失敗し悩みもする私たちと同じ人間です。かれらと自分の距離を把握し、仕事の基本を実践することがかれらへ近づく第一歩となります。

あとは実践あるのみです。一つひとつのタスクを地道に実行して信頼を積み重ねましょう。失敗しても決して腐らず振り返りをおこない、ポジティブ思考のサイクルに入りましょう。悩み多き新人時代も、これできっと乗り越えられるはずです。

戸塚 隆将(とつか・たかまさ )
シーネクスト・パートナーズ 代表取締役。1974年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2007年、シーネクスト・パートナーズ(http://www.cnext.co.jp)を設立、代表取締役に就任。同社にて企業のグローバル事業開発およびグローバル人材開発を支援するほか、HBSのケーススタディ教材を活用した実践ビジネス英語プログラム「VERITAS」(http://veritas-english.jp)を主宰。著書に『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(2013年、朝日新聞出版)、『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか? 実践編』(2014年、同)があり、前者は20万部のベストセラーになった。