東芝「逆ギレ」決算会見全内幕〜この期に及んで経営陣は「被害者面」

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週刊現代 プロフィール

ただでさえ監査法人の承認を得ないで決算をするのは異例のうえ、その決算会見で経営陣が開き直る「超異常事態」。実はその裏では、この会見の2日前、週末の日曜日に起きていた「事件」が伏線になっていたことはほとんど知られていない。

複数の関係者によれば、この日(4月9日)、東芝は監査法人であるPwCあらた有限責任監査法人側に、重要な報告書を提出していた。

昨年12月27日に、アメリカの原発会社ウェスチングハウス社(WH社)で巨額損失が発生したことが明るみに出て以来、降ってはわいて出てくる疑念に対して、東芝側が調査した結果をまとめたものがそれである。

WH社の経営陣は以前から損失を知っていながら隠していたのではないか、原発会社の一部の幹部が従業員にプレッシャーをかけて損失額を少なく見せかけようとしたのでは……。東芝はこうした疑惑が出るたびに、監査法人からの示唆をもとに、年始頃から直近まで3ヵ月以上にわたって、水面下で調査してきた。

調査の中身は、WH社の役員や従業員など合わせて累計50人以上へのインタビューから、さらには関係者のメール約60万件の調査にまでおよぶ難作業。その集大成となる調査結果をこの日、「包括報告書」という形で提出していたのだ。

東芝関係者が明かす。

「監査法人が気にしていたのは、WH社の経営陣はいつ損失を認識していたのか、そして従業員にプレッシャーをかけたことで決算数値が誤魔化されているのではないか、ということです。

これに対して、東芝の調査ではまず、プレッシャーの存在は間違いなくあったという結果が出た。具体的には、『損失額をこれくらいの数値にできないか』という経営陣の発言があったということでした。

しかし、過去のメールを復元するなどして物証を調べても、それによって財務諸表が『お化粧』されていたという証拠は見つからなかった」

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監査法人のホンネ

つまり、内部統制に一部問題はあったが、「決算上は問題なし」というのが東芝側の結論。決算を提出しないと上場廃止が決定する4月11日の期限にギリギリ間に合う形で報告書を提出できたことで、東芝経営陣はほっと胸を撫でおろしていた。これで、監査法人も納得してくれるだろう。4月11日には晴れて決算を発表できる、と。

しかし、そんな東芝経営陣の楽観はもろくも崩れることになる。

「適正意見は出せません」

監査法人からの返答は、当該の調査結果についてはいまだ証拠不十分で「評価」を決定できないので、決算にお墨付きを与えられないというものだったという。

「当然、東芝の経営陣は唖然としました。東芝がいくら調査しても『ない』ものを、証明不十分だと言われても、『ないことの証明』はもうできない。

しかも、すでに決算会見を予定している4月11日が間近。この期限に間に合わせるために必死に調査をしてきたのに、いまからこれ以上なにを調べればいいのかと、途方に暮れた」(前出・関係者)

もうやることはやったのだからこれで十分とする東芝と、頑として首を縦に振らない監査法人の両者が互いに譲らないまま、ついに期限の4月11日が到来。

上場廃止をなんとしてでも避けたい東芝経営陣らが窮余の策として選択したのは、すべてを監査法人のせいにして決算発表をするという決断だった――これが「逆ギレ」会見にいたる全内幕だ。

 

それにしてもどうして、互いにここまで「対立」する事態となってしまったのか。

「監査法人としては、前任の新日本監査法人と同じ轍は踏めないという事情があった」と言うのは、東芝問題の取材を続ける経済ジャーナリストの磯山友幸氏である。

「東芝の前任の監査法人だった新日本監査法人が、東芝の粉飾決算を見抜けなかったことで、重い処分と莫大な損失を被ったことは監査業界では一大事件でした。

あの一件で、新日本監査法人は金融庁から行政処分を受け、20億円以上の課徴金支払いを命じられたうえ、理事長が辞任する事態にまで追い込まれた。

さらに、行政処分がくだされた後、新日本監査法人と契約を打ち切る企業が続出。富士フイルムホールディングス(HD)やANAHDなどが監査法人を変更するなど、顧客を失うことになった。

当然、PwCあらたとしてはこの教訓があるから、慎重に慎重を重ねる必要が出てくる。仮に東芝の調査をそのまま鵜呑みにした後で、粉飾などが発覚すれば、莫大な損失リスクに直面しかねない」