北朝鮮のミサイル発射失敗の裏に、アメリカのサイバー攻撃あり?

「水面下の戦争」その実態
山田 敏弘 プロフィール

アメリカの電力網がダウンする?

一方の北朝鮮も、対抗心を燃やすかのように米国に対してサイバー攻撃を行なっている。専門家や米軍関係者らは、北朝鮮が近年、サイバー能力をますます高めていると見ている。

北朝鮮でサイバー攻撃を担っているのは、朝鮮人民軍偵察総局。ここには121局と呼ばれるサイバー部隊が存在し、中国にいくつも拠点を置いている。また、ハッキングを担う91部隊という組織もある。朝鮮人民軍には、全体で6000人近い優秀なハッカーが在籍しているようだ。

最近、北朝鮮による重大な対米(対韓)サイバー攻撃が表面化し、物議になっている。直接的な攻撃ではないが、実はそれよりも深刻な事態かもしれないと見る向きもある。

それが、「5015」作戦の流出だ。米軍は韓国軍とともに、北朝鮮を先制攻撃し、金正恩・朝鮮労働党委員長を抹殺するという「OPLAN(作戦計画) 5015」を2015年に作成している。この「5015」は、それまで長く存在していた「OPLAN 5027」という作戦計画をアップデートしたものだ。ところがこの「5027」が北朝鮮のサイバー攻撃によって「盗まれていた」ことが最近判明した。

これによって、対北朝鮮攻撃の作戦内容の一部が北朝鮮に把握された可能性が高い。そしてここ最近まで対北朝鮮政策の見直しに着手していた米国家安全保障会議(NSC)が、この計画そのものを調整する必要性を検討している、との指摘がある。メディアは米軍が先制攻撃を行う・行わないと騒いでいるが、計画の調整が継続中だとすれば、その調整が終わる前に先制攻撃が行われることはあり得ない、と考えるべきだろう。

 

サイバー戦では直接的な攻撃を実施しなくても、サイバー攻撃によるスパイ工作で敵の政策を揺さぶって翻弄することもできる。実際の軍事力ではアメリカに遙かに劣る北朝鮮が活用できる、効果的な攻撃だ。

北朝鮮はこれ以前にもアメリカにサイバー攻撃を実施してきた。2014年に米カリフォルニア州のソニー・ピクチャーズに対して、激しいサイバー攻撃を仕掛けたのはよく知られている。

アメリカはその報復として北朝鮮国内のインターネットを完全にダウンさせたとされるが、国防総省も北朝鮮のサイバー攻撃能力に対しては、アメリカ太平洋軍のネットワークをダウンさせたり、米国本土の電力網などインフラ施設への攻撃も実行可能なレベルにあると警戒している。

今日の紛争を考える際、サイバー戦についても考えることが不可欠になりつつある。それはアメリカや北朝鮮の行動によって証明されている。米政府も、サイバー攻撃のみで北朝鮮のミサイル開発を100%防げるとは思っていないが、それでも、有効な手段のひとつとして見ているのは間違いないし、現在もこうした軍事オプションに多額の予算を充てて工作を続けている。われわれの想像も追いつかない、驚くような新しいサイバー工作手法がすでに開発、実施されているはずだ。

前述の通り、直近でアメリカが北朝鮮に対して直接的な攻撃を仕掛ける可能性は低いと思う。が、水面下ではすでに緊迫した「サイバー戦争」が行われていることは、間違いないのだ。

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