「昔の家族は良かった」なんてウソ! 自民党保守の無知と妄想

家庭教育支援法案の問題点
広田 照幸 プロフィール

「昔の家族は良かった」のウソ

では今回の法案の何か問題なのか。ここでは4つの問題点を指摘したい。

第一に、家族や家庭教育についての認識に問題がある。

自民党の先生方の「伝統的な子育て」を賛美する「親学」を含めて、「昔の家族は良かった」というのは過去に対する無知と妄想である。「昔は親がしっかり子どもをしつけていた」という命題も「家庭の教育力が低下している」という命題も、いずれもまちがいである。

庶民の暮らしを見ると、乳児は兄や姉や子守の背中に、ただ一日中くくりつけられていたし、幼児は親の目の届かないところで放任されていた。親子間の会話は現代に比べてはるかに低調であったし、親には「子どもを理解してやろう」などという姿勢はなかった(広田照幸『日本人のしつけは衰退したか』講談社現代新書、広井多鶴子・小玉亮子『現代の親子問題』日本図書センター、等を参照されたい)。

「現代の親子関係は希薄化している」「家族のことをかえりみない親が増えている」「現代の青少年は規範意識が薄らいでいる」などというのもウソである。少しだけデータを示しておく。

図1は、統計数理研究所が5年おきに行ってきた「日本人の国民性」調査の結果である。「あなたにとって一番大切なもの」として「家族」を挙げる比率が、戦後一貫して増加してきたことを読み取ることができる。「家族こそが一番」という人は増え続けてきているのである。

図2と図3は、全国学力・学習状況調査(いわゆる全国学テ)で、中学3年生の規範意識を尋ねたものである。

「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」を足した数字で見ると、学校の規則を守っているとか、いじめをいけないことだと思う比率はともに9割を超えている。人が困っているときに進んで助けていると答えた割合は83.8%、人の役に立つ人間になりたいと思っている割合は92.8%に上る。

 

平成28年度 全国学力・学習状況調査 報告書】(全国の中学3年生が回答)

1 当てはまる
2 どちらかといえば,当てはまる
3 どちらかといえば,当てはまらない
4 当てはまらない
その他、無回答

図2 日常生活の規範意識

図3 社会生活の規範意識

現代は「家族の時代」だし、大半の子どもは規範意識も含めてまともに育っている。少年非行の統計を見ても、過去最低の水準になっている。

保守派の政治家が描いている、過去や現在の家族像は妄想だらけなのである。家庭教育や子育てを論じようとする政治家は、せめてもっと過去の歴史や現在の調査データをきちんと学んでほしい。

とはいえ、現代の家族に問題がないわけではない。

文科省の検討委員会で指摘されてきているような、家族の規模の縮小と家族の孤立化、家庭と地域との関係の希薄化(親子関係の希薄化ではない)などは、確かに実証的に見ても確認できる。一部の家庭では、誰からも援助のないまま生活がすさんで、子どもを放任したり虐待したりしている。

ではそういう層の家庭に対してどうしたらよいのか。この問いへの答えは最後に論じることにして、もう少し今回の法案の何か問題なのかを考えていく。