ウーバーはどうなるのか〜「世界で最も幸運でない起業家」を襲う危機

いま直面する試練の数々
辻野 晃一郎 プロフィール

正念場を乗り越えることはできるか

そのような苦労を耐え凌いだ末にウーバーで大成功を勝ち取ったカラニックからすれば、言い争ったドライバーへの捨て台詞はまさに正論として共感できないものではない。

しかし同時に、すでに時価総額が700億ドル近いともいわれる未上場ながら大企業の総帥として、自分のビジネスを末端で支える個人ドライバーへ対応としては、いささか未熟だ。

咄嗟のこととはいえ、感情的にならずにもう少し思いやりのある冷静な対応が出来なかったものか。そしてそこに現在のウーバーの脆弱な経営体質の一番の原因があるように感じた。

 

昨今、日本でもヤマト運輸などの過重労働が問題となっているが、どんなに経費を削減したところで、運送業は労働集約型産業だ。ウーバーとしては、いずれは完全自動運転車を配車するプラットフォーマーとしての立場を確立するのが究極のゴールになるだろう。

しかし当面は、現在の白タクモデルを続けざるを得ない。今後、ウーバーが市場で生き残っていくためには、粗野で強引な社風を改めていく必要があるだろう。独善や労働搾取的なビジネスのイメージが行き過ぎると、冷酷な反社会的企業として世間の反感を強めるだけだ。

ウーバーが最初に実現したスマホアプリからオンデマンドで配車サービスを行うという創造的破壊型の画期的なビジネスは、世界中で、許認可によって保護されたビジネスに不満を持つ人々や、より便利で安い移動手段を求める多くの人々に支持され、今後も成長を続けるだろう。

しかし、そこにはすでにリフトをはじめとした競合の存在も増え、先覚者とはいえウーバーが競争に負けて淘汰される可能性もある。

現在のウーバーが直面する試練の数々は、急成長するスタートアップが避けて通れないいわばグローイング・ペイン(成長痛)だ。前述の通り、若くして数々の修羅場をくぐり抜けてきたカラニックにとって、決して乗り越えられない壁ではないだろう。

個人的にも親交のあるウーバー日本法人の高橋正巳社長に、内情についてインタビューしたところ、「『変わるきっかけ』や『変わらないといけないという共通認識』が生まれたことで、社内改革もどんどん進んでいます。進捗についても随時社内でシェアされており、会社として前向きに課題を解決しようとしていると感じています」とのコメントをもらった。

ウーバーが今の正念場を乗り越えて、いずれグーグルやアマゾンなどと並ぶような存在となることに期待したい。