ウーバーはどうなるのか〜「世界で最も幸運でない起業家」を襲う危機

いま直面する試練の数々
辻野 晃一郎 プロフィール

「ドライバーから搾取する」というイメージ

現在、日本では「働き方改革」が進んでいるが、ウーバーのビジネスモデルの根底を支えているのは、いわゆる非正規の個人事業主的ドライバーたちだ。

待遇に不満を抱えるドライバーが多く、アプリでチップを受け取れるようにしたり福利厚生を求めたりという運転手からの要求に対して、ウーバーはこれまで一切応じていない。労働組合を結成する動きもあるが、それも阻止してきた。

そうした中、カラニックが自らウーバーのサービスを利用した際、目的地に到着して降車する間際に、ウーバーの待遇に苦情を言うドライバーと言い争いになるハプニング動画が公開されて、「ドライバーから搾取するウーバー」というイメージが強まる結果にもなった。

私もこの動画を見たが、「おまえのせいで収入が減り破産だ」と因縁をつけるドライバーに対して、カラニックが捨て台詞のように、‟You know what? Some people don’t like to take responsibility for their own shit. They blame everything in their life on somebody else.” (いいか、世間には自分自身のヘマの責任を取りたがらない奴らがいる。そいつらは自分の人生のすべてにおいて他人を非難するんだ)と言い残して車を降りていったところが印象に残った。

ここはまさにカラニックの信条が読み取れるシーンでもあるだろう。

〔PHOTO〕gettyimages

カラニックは実は大変な苦労人である。成功した起業家の華やかなストーリーの陰には、ほとんど語られることすらない膨大な数の失敗ストーリーがある。

カラニックもいきなりウーバーで成功したわけではなく、それまでに数々の失敗を積み上げて来ている。自分でも「世界で最も幸運でない起業家」と述べているほどだ。「もっとも不運な起業家」でないのは、最終的には上手くいったからだろう。

彼の最初の起業はUCLAに在学中のことだ。P2Pのサービスを立ち上げたが、契約書のトラブルで投資家から訴えられている。

 

また、ユーザー同士が、音楽や映画のファイルをネット上で交換するというナップスターと同じようなファイルシェアのサービスを提供していたことから、米国内のエンターテイメントコンテンツ企業計33社から、著作権法違反の疑いで総額2500億ドルの訴訟を起こされた。賠償金が払えず会社更生法を申請、会社は売却された。

その後、メディア企業にネットサービスを提供する2つ目の会社を起こしたが、ネットバブル崩壊の影響もあって誰も相手にしてくれず、コンサル業などで日銭を稼いだ。

しかし、共同経営者に裏切られ、税金の滞納で刑事訴追寸前にまでなる。社員はすべて辞めていき、1人だけ残ったエンジニアもグーグルに転職。結果的にそれまで進んでいたAOLなどとの商談もすべて破談となった。

その後、タイに移住するなど、さまざまな紆余曲折を経て、最終的にはなんとか会社のバイアウトに成功してウーバーを起業する原資を得るが、最初に起業してから10年間鳴かず飛ばずの状態が続き、無給で苦しい生活を送っていた。