〔前回までの話〕2015年11月、働き盛りの私の身に、思いもよらぬがん宣告が下された。ステージIVAの末期がん、余命は1年。私は医師がすすめる標準治療ではなく、代替療法を選択したのだが、過酷な人参ジュース作りにすっかり参ってしまった。そんなとき「ノニ」という聞きなれない果物の存在を知る…。作家の朱郷慶彦さんが綴る、ほぼリアルタイムで進行する闘病ドキュメンタリー第9回。
(第1回はこちら)
三度目に私がノニとコンタクトしたのは、昨年の8月ごろのことだった。
私の会社が加盟していた経営者団体の仲間の一人にMさんという女性がおり、そのMさんが、私のがんを大変心配してくれた。どこに行っても、私のことを親身に心配してくれる人がいるというのは、さすが私の人徳というべきか。(本当の人徳者は、こういうつまらない冗談は言わないものである)
Mさんが紹介してくれたのが、またしてもノニジュースであった。
ノニジュースはこの前試したばかりだから。そう言って、やんわりと断ろうと思ったのだが、なにしろこのMさんは、好意と熱意の塊のような人で、笑うと女学生のように爽やかな雰囲気を周囲に振りまくというズルい特技を持った人だ。
「とにかく絶対に飲んでみて」と、まるで山岳遭難者がザイルにしがみつくような真剣さで言うものだから、私も勢いに負けて「では、試してみます」と答えざるを得なかった。
Mさんが勧めてくれたのは、モリンダという会社が販売しているノニジュースで、タヒチで栽培されたノニを発酵させて作ったものだという。
Mさんが試しにと1本くれた「マキシドイド」という名前のノニジュース。一瓶750ミリリットル入りで9千円ほどする。こちらもかなり良いお値段だ。
まあ、とにかくお付き合いで飲むわけだから、1本飲んでみて、後は断れば良いという軽い気持ちで飲み始めた。
朝晩50ミリリットルずつ飲んでみてくれというので、素直に従う律儀な私。
味は、ナチュラルハウスのものに比べてフルーティーで、もっとドロドロした感じだ。発酵させている分、粘度が高まっているのかもしれない。しつこいようだが、私は果物好きで知られた男だ。(家族以外、誰も知らないかもしれないが)
この味がダメという人もいるらしいが、私は問題なく飲めた。というか、美味しいとすら思った。まあ、1本飲むだけだから、美味しかろうと不味かろうと、どうでも良いのだが。