米軍がシリアをミサイル攻撃した意味 〜中東混迷の転換点となるか

紛争7年目で初の軍事介入
末近 浩太 プロフィール

象徴的な「懲罰」としての攻撃か

トランプ政権の巡航ミサイルによる攻撃は、現段階では象徴的な意味合いが強いものであろう。

つまり、アサド政権を「推定有罪」とし「懲罰」を加えること自体が目的であり、シリア紛争自体の収束への道筋を定め、それに従って政策を積み上げていくという長期的なビジョンは見当たらない。

そもそも、そうしたビジョンの不在こそが、シリア紛争の泥沼化・長期化の一因であった。仮にビジョンが存在したのならば、もっと以前に大規模な軍事介入を含む何らかの行動を起こしていてもよかったはずである。

米国のシリア紛争への軍事介入が語られるとき、多くの場合、アサド政権の軍事的排除まで含まれる。

しかし、「アサド後」のシリアに平和で民主的な国づくりを目指すとしても、その具体的な方法はおろか、それを担う主体が誰になるのかについても不透明なままである。

こうした状況下での軍事介入は、出口戦略を欠いたものとなりがちであり、ベトナムやイラクの二の舞になりかねない。

 

「推定有罪」による軍事介入をめぐる正当性の問題もある。大量破壊兵器を保有・使用する独裁者を打倒するために、米国が他国に大規模な軍事介入を実施する――これは、2003年のイラク戦争と似ている。

しかし、その後のイラクで直面した米軍の苦難、国際社会における米国の孤立、そして、何よりもイラクという国家の事実上の崩壊とそれにともなう中東地域全体の不安定化は、米国にとっても、国際社会にとっても大きな苦い教訓となっている(と思いたい)。

また、トランプ大統領が、評判通り(よい意味でも悪い意味でも)コスト意識の強い人物であるとすれば、シリア紛争への本格的、直接的、長期的な軍事介入を是としない可能性が高い。莫大な戦費だけでなく、アサド政権を支援するロシアとの関係の悪化や再調整の必要も軍事介入に踏みとどまるための判断要素となる。

今回の化学兵器使用事件とそれに対する米国によるシリアへの直接的な攻撃が、シリア紛争、広くは中東情勢にどのようなインパクトを持つのか。短期的には大きな変化は起きにくいと思われる。

しかし、中長期的な展望については予断を許さない。

トランプ政権の外交政策がいかなるものなのか、いまだ明確な姿は見えてこないが、シリア紛争への対応がそれを見極めるための大きな材料となるであろう。あるいは、シリア紛争を軸にして「トランプ・ドクトリン」が形成されていくのかもしれない。

いずれにしても、今後の国際政治のあり方を左右する課題として、シリア紛争の実態を引き続き注視していく必要がある。

(末近浩太氏のバックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/kotasuechika