米軍がシリアをミサイル攻撃した意味 〜中東混迷の転換点となるか

紛争7年目で初の軍事介入
末近 浩太 プロフィール

なぜ米国は動いたか

とはいえ、7年目に突入した泥沼のシリア紛争において、米国が現段階で即応的にできるのは、それだけであったと見ることもできる。

いつでもできたことを、今やっただけのことに過ぎない。言うまでもなく、米軍には最初からそれをやる能力がある。

そもそも、シリアにおける化学兵器の使用は2013年8月以降も複数回報告されてきたが、使用主体の特定が困難なこともあり、米国も国際社会も強い関心を向けなくなっていった。

その背景には、2014年頃からの「イスラーム国(IS)」の急速な台頭やアサド政権による化学兵器禁止機関(OPCW)と国連の調査団の査察のもとでの化学・生物兵器の廃棄があった(2016年1月に完了)。

化学兵器という非人道的な方法で多くの無辜の市民が虐殺された事実、そして、それを記録した映像や画像には、胸を潰されるような思いを禁じ得ない。人として、強い怒りと悲しみを覚えるのは当然のことである。

化学兵器による攻撃を生き延びた9歳の少年〔PHOTO〕gettyimages

しかし、こうした悲劇は、残念ながら、紛争下のシリアで何度も繰り返されてきたことであった。だが、今回の化学兵器使用事件が米国の攻撃(だけでなく、国際社会の大きな反応)を招いた。

今回の事件は、これまで繰り返されてきた紛争の悲劇と何が違い、何が「特別」だったのか。

 

その死傷者の規模が「特別」だったのか。そうだとしても、毎回何十人もの死傷者を出し続けてきたロシア軍や米軍の「誤爆」との違いはない。

では、通常兵器でなく化学兵器が用いられたことが「特別」だったのか。だとしても、2013年8月以降にも、化学兵器は何度もシリア領内で使用されてきた(そして、国際社会の反応は明らかに鈍くなっていった)。

米国の対応を観察していても、シリア紛争への介入/非介入の明確な基準を見出すことは難しく、様子見(wait and see)が基本路線である印象を受ける。あるいは、これまでの数々の失敗や挫折に鑑みれば、様子見しかできないというのが現実であろうか。

そうしたなかで、今回の化学兵器使用事件の凄惨さや米国国内と国際社会へのインパクトから、トランプ政権としては何らかの行動を起こさざるを得なくなったというのが実状なのかもしれない。

今回の攻撃は、国連安保理での決議を経ない、完全に米国による単独行動である。

シリアやロシア、イランは国際法に違反する行為として非難しているが、それを否定することはできない。化学兵器の使用という違反行為に対して、主権国家に対する一方的な攻撃という違反行為、ないしは「超法規的」な行為で応じたかたちとなった。