なぜ地方都市に「TSUTAYA図書館」が次々とつくられているのか?

人口減少と消費社会化のなかで…
貞包 英之 プロフィール

「貸出」から「滞在」へ

TSUTAYA図書館は、既存の図書館の使命を転倒している。ただしそれはいたずらに対立するわけではない。そもそも既存の図書館の側でも「滞在」は重視され始めている。

2007年より指定管理者制度を利用し始めた千代田図書館や、2011年に建てられた武蔵野プレイス、2015年に開館のぎふメディアコスモスなど、「滞在者」へのサービスを重視する複合型の図書館が、TSUTAYA図書館にむしろ先駆け造られてきたのである。

この意味ではTSUTAYA図書館は、『中小レポート』や『市民の図書館』が60年代以降に打ち出した図書館像と連続しているとさえいえる。つまり、市民に対する奉仕の拡大という基本路線はそのままに、「貸出」から「滞在」へとサービスの重心がラディカルに移されたのである。

ではなぜ近年、図書館に求められるサービスの質は変わりつつあるのだろうか。

それにはさまざまな原因が考えられるが、まず単純には私たちが、まがりなりにも「豊か」になり、本を買うことが容易になったことが影響している。

戦後、書籍は再販制に守られることで、相対的にみれば値段上昇を抑えられてきた。1970年を基準とすれば、2015年まで全体の消費者物価指数は2.81倍に上がったのに対し、書籍の平均定価は2.32倍に留まっている(統計局消費者物価指数、『出版年鑑』)。

さらに90年代以降のブックオフを代表とする巨大古書店の台頭は、本を手に入れやすい消費財に変えた。

問題はこうした書籍のいわばコモディティ化が、「貸出」第一主義の土台を掘り崩していることである。「貸出」主義は、市民の願いにできるだけ応えることを目標とする。そのせいで図書館は、複本を備え人びとの予約に対応するなど、ベストセラー優遇の傾向をみせるようになってきた。

こうした状況は機会損失を招くと出版社や著者からしばしば非難されてきたが、それに加えて、これだけ図書が消費財化された現実のなかで、図書館が「貸出」を中心とすることの意義を少なくしていることが問題になる。

ベストセラー書であれば、少し待てば、かなり安価に古書店で買える。それなのに予約を長期間待つ利用者に奉仕することの意義は正当化しにくいのである。

だからこそ図書館は別の存在意義を見出そうとしているのではないか。本そのものを提供するのではなく、本に出会い、囲まれ、それを読む環境を提供すること。そうした新たな価値が、多くの図書館で模索されているのである。