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なぜ「タリスカー10年」は食中酒にもなりうるのか?

タリスカー・ゴールデンアワー第1回(後編)

シマジ: 山岡さんからみて、タリスカーの製法で特徴的というか、面白い部分はどこですか?

山岡: タリスカーは「ワームタブ」という伝統的な蛇管式の冷却方法を守っているんですね。現在、一般的なのは多管式、「シェル&チューブコンデンサー」といって、これは太い銅管の中に細長い銅製パイプを100本ほど内蔵している冷却管なんですが、タリスカーの製法は昔ながらの手法で、長い1本のパイプの中を蒸気が通るうちに冷やされて液化する仕組みです。

ワームタブのほうが銅との接触面が少ないので、蒸留液に含まれている硫黄成分が多く残るという特徴がありますね。

あとはウォッシュスチルのU字に曲がったパイプの先に付いている精留器も独特です。蒸溜された蒸気のうち、重たい成分は再び初留釜の中に戻されて、気化と液化を繰り返します。そうすることでよりクリアな初留液が生まれます。

こういった点もタリスカー独特のドライでスパイシーなキャラクターに一定程度関係しているのだと思います。

シマジ: わたしはタリスカー蒸留所の仕込み水を汲んでいるところまで行きましたが、水の色が茶色でした。

山岡: それはピート由来の色でしょう。

シマジ: アイラ島ばかりではなく、スコットランドはだいたいどこにでもピートがあるんですよね。

山岡: そうですね。むしろ茶色のところのほうが多いですね。シャワーの水も茶色ですからね。だからビックリする人が多いですが、でもあの茶色の水で水割りを作ると本当に美味いですよ。

シマジ: わたしもそれはやってもらったことがあります。美味かったです。

山岡: 加熱しないのは、あんまりお薦め出来ないかもしれないけど、タリスカーのスカイ島でしたらずいぶん北のほうなので、そんなに体に悪いこともないと思います。

シマジ: 製法以外にも、蒸留所の立地や原料、あとはなんといっても熟成樽の影響がいちばん大きいんでしょうね。

山岡: だと思います。樽のマネージメント次第でずいぶん印象が変わってくるはずです。現在、ディアジオは、クラシックモルトシリーズをはじめ、シングルモルトの多くに関して、各蒸留所の個性を際立たせるためにサードフィルを使っています。要するに3回目の樽を使うわけですね。だから、樽由来の甘味があまり出てこない。それでドライな味になるのでしょう。

シマジ: ボブ、実際のところはどうなんですか?

ボブ: それは企業秘密です(笑)。山岡さんやシマジさんは素敵な“変態”ですよ。モルトウイスキーは「美味しい」と思って飲めばそれでいいんです。

山岡: 一般的には、シングルモルトとしてリリースされるものは、ファーストフィルかセカンドフィルのほうが多いんですよ。

シマジ: そうなんですか。ボブ、希少なサードフィルの樽をどうやって大量に確保しているの?

ボブ: すべては企業秘密です。

立木: ボブの会社に対するこの忠実さが、おれは気に入ったね。来月もよろしくね。

シマジ: 最後に、タリスカーのラベルには“MADE BY THE SEA”って書かれていますが、このコピーもロマンティックでいいですね。タリスカー蒸留所はホントに海のそばにあるんだものね。

山岡: あの“BY THE SEA”は、海のそばという意味と、もう1つ「海によって作られた」というダブルミーニングなんですよ。

シマジ: なるほど。海の潮風で、か。ボブ、そうですか?

ボブ: まったくその通りでございます。

山岡: ハイボールばかりだと体が冷えるので、そろそろお湯割りが飲みたいですね。年を取ってきたら、お湯割りをお薦めします。香りが立ってなかなか美味しいですよ。

立木: へえ、そんなのもアリなのか。おれもタリスカーのお湯割りを飲んでみたい。

セオ: ぼくとヒノにも作ってください。

シマジ: 伊勢丹のバーでもウイスキーのお湯割りを流行らそうかな。ボブ、全員にお湯割りを作ってください。

ボブ: かしこまりました。では立木先生から、そしてシマジさんかな。年功序列でいきましょうか。

シマジ: 全員揃ったところで、もう一度、スランジバー!といきましょう。

全員: スランジバー!

シマジ: うん、これもなかなかイケるじゃない。山岡さん、今日はありがとうございました。

山岡: こちらこそ、ありがとうございました。立木先生に撮っていただけるなんて光栄です。今日の写真は宝物にします。

〈了〉

山岡秀雄(やまおか・ひでお)
1958年東京生まれ。1982年東京大学文学部英語英米文学科卒業。シングルモルトのコクレクターとして有名で、世界的にネットワークを持つ。海外のノージングコンテストでも7回の優勝歴がある。著書にDVDBOOK『シングルモルトのある風景-アイラ、それはウィスキーの島』(小学館)、翻訳書に『モルトウィスキー・コンパニオン』『ウィスキー・エンサイクロペディア』(共訳・小学館)など。
島地勝彦(しまじ・かつひこ)
1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。柴田錬三郎、今東光、開高健などの人生相談を担当し、週刊プレイボーイを100万部雑誌に育て上げた名物編集長として知られる。広告担当取締役、集英社インターナショナル代表取締役を経て、2008年11月退任。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。 『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)、『バーカウンターは人生の勉強机である』『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』(CCCメディアハウス)、『お洒落極道』(小学館)など著書多数。
ロバート・ストックウェル(通称ボブ)
MHDシングルモルト アンバサダー/ウイスキー文化研究所認定ウィスキーエキスパート。約10年間にわたりディアジオ社、グレンモーレンジィ社、他社にて、醸造から蒸留、熟成、比較テイスティングなど、シングルモルトの製法の全てを取得したスペシャリスト。4ヵ所のモルトウイスキー蒸留所で働いた経験を活かし、日本全国でシングルモルトの魅力を面白く、分かりやすく解説するセミナーを実施して活躍しています。