日本の科学研究はなぜ大失速したか 〜今や先進国で最低の論文競争力

研究費を増やすだけではダメ!
仲野 徹 プロフィール

大学というシステムが抱える問題の解決を

研究費が足らないから競争力がなくなった、ということに全く異論はない。しかし、そのことは必ずしも、研究費を増額したら競争力が蘇る、ということを意味しないのだ。

もちろん、他の国が研究費を増額し続けているのであるから、研究費の増額は必要条件である。ただし、それは十分条件ではない。十分条件を満たすには、大学というシステムを根本的に見直す必要がある。

適正な競争原理の導入、積極的な任期制の導入、研究者の流動性の向上、使命を終えた部局の統廃合、テクニカルスタッフの充実、高額研究機器の効率的な利用、無駄な会議や書類作成といった意味のない雑用の減少などなど、すでに指摘されている数々の問題点を、これまでやってきたような小手先だけの改革ではなく、本気でクリアしていかなければ、たとえ研究費を増額したところで十分条件が満たされはしない。

そのようなことができれば苦労はしない、と言われるかもしれないが、それは認識が甘いのではないか。そうしなければどうしようもない時期に来ているような気がしてならない。

北海道大学が本当に大規模な人員削減に踏み切れるのかどうかは知らない。スケールメリットが重要なこともわかっている。

しかし、高齢社会における福祉・医療という喫緊の問題があるわが国において、大幅な大学・研究予算の増額は望めないだろう。

かつての社会主義国家のような悪平等主義は捨て去って、教育と研究と業務を合理的かつ効率的に分配する、部局の壁を取り払って教育や運営に取り組む、優秀な人材にはその研究能力を最大限に発揮できるように処遇する、など、人員を削減してもやっていけるようなシステムを構築しなければ、大学が瓦解しかねないところまできている。

このままいくと、日本の科学の将来を論じることの意味すらなくなってしまう時代がやってこないとも限らない。