柴咲コウが気の毒でならない…大河ドラマ『直虎』つまらなさの研究

月9ドラマを見ているよう
週刊現代 プロフィール

ドラマ評論家の成馬零一氏は言う。

「柴咲さんは、直虎の子役時代のテンションや性格を忠実に引き継いで演じていますね。ストーリーがラブコメ風なので、キャラクターも漫画の登場人物のような言動が多く、無理をして演じているように感じます。

ただ、『篤姫』もはじめはあんみつ姫のようで戸惑いましたが、江戸城に入ってからは政治的成長を見せ、物語もグンと面白くなった。一方で『江』のように最後の最後まで幼く、視聴者が付いていけない主人公になってしまうこともあります。

直虎は井伊家の当主になるという転機で、もう少し大人びてほしいところですね」

テレビライターの桧山珠美氏も同意する。

「ホームドラマ大河、といった印象です。時代劇というより、月9のドラマを見ているよう。

ほかにも、直虎を巡る、幼なじみの直親と小野政次(高橋一生)のどろどろとした三角関係や、直親が直虎を後ろから抱きしめる描写など、女性受けを狙った演出が満載。往年の大河ファンには、どうしても物語が軽く感じられます。

これには、今まで大河を見ていなかった層を取り込もうというNHKの狙いがあります。知名度の低い直虎ですが、実は『戦国BASARA』シリーズなどのゲーム界では、大人気の美少女キャラクターだったので、そのファンを狙ったのでしょう。

しかし、今時の若者や恋愛ドラマ好きの女性に向けて試行錯誤した結果、昔から大河を観ている人がどんどん離れてしまうのでは、本末転倒ではないでしょうか」

そんななか大河ファンが「見続けるか、止めるか」の試金石としたのが第9話の「桶狭間に死す」だった。海道一の弓取りといわれた今川義元の上洛軍を、まだ尾張の一大名にすぎなかった織田信長が奇襲、首級を挙げた戦だ。

この有名な「桶狭間の戦い」で直虎の父・井伊直盛が討ち死にしていることもあって、信長と義元、直盛らの死闘が見られるはずだと、期待が高まったが――。

 

海老蔵はどうした?

「前半の一番の見せ所ではと期待していたのですが、たった一話、それも冒頭の10分ほどで終わってしまった。今川義元はナレ死(登場人物の死亡シーンが描かれることなく、ナレーションで死亡したと語られること)で唖然としました……。

事前に織田信長役と発表されていた市川海老蔵の出番もなく、肩透かしでしたね。

『真田丸』で関ヶ原の戦いが40秒で終わった際も物議を醸しましたが、あれは真田家が参戦していないものは描かないという脚本家・三谷幸喜さんの意図が説明されていた。けれども今回の描写で、NHKはもう大河ドラマにかけるおカネがない、もう昔のようなダイナミックな合戦シーンは見られないんだと認識しましたね」(桧山氏)

主役・直虎が出陣することはもちろんなく、父親をはじめ、落命した井伊家の者のために、経文を唱えるのみだった。

「柴咲さんの出番が少ない、活躍しない、という不満が出るのは当然でしょう。実際に、直虎は僧だったのですから、大っぴらに動くことはできません。無理に歴史に関わらせようとしない方針から、お家騒動のちまちました話ばかりになっている」(碓井氏)

一方、柴咲には気の毒だが、直虎は目立たないままでいい、という意見もある。

「不評だった『花燃ゆ』は、著名でない主人公にもかかわらず、どんどん史実に絡んでいったために、話がおかしくなりました。

今回は高橋一生の演じる小野政次を主役だと思って、直虎はいてもいなくてもいい、という姿勢で観るといっそ気が楽かもしれません。

たとえば織田信長を主役にすると嘘は描けませんが、直虎は歴史的資料がほとんど残っていないため、性格描写も自由ですし、歴史的事件に関わらない限りは作り手の思うままに動かすことができる。ファンタジーのヒロインと思えば楽しめるのではないでしょうか」(桧山氏)