日本政府は本当に「東芝メモリ」を救うべきなのだろうか?

技術流出の懸念は分かるけれど…
田中 博文 プロフィール

過去の中止勧告事例は?

今回、政府が対象条文としているのは外為法27条と思われる。

外為法27条は外国法令に基づき設立された法人などの外国人投資家が、わが国の安全を損なったり、公の秩序の維持の妨げに繋がったりするおそれがある対内直接投資等についてを、事前の届出が必要な対象としている。

具体的には防衛関連事業15業種(武器 、原子力、化学兵器、生物兵器、ミサイル、先端素材、材料加工、エレクトロニクス、電子計算機、通信、センサー、航法装置、海洋関連、推進装置、その他)に属する企業の株式10%以上を保有しようとする場合には、3ヵ月前までに行政庁に届けることになっている。

行政庁は必要に応じて、外為等審議会を開催し、「国の安全」に問題があると判断された場合は、取引の変更・中止等の命令を出すことが出来る。

【ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(CTI)による電源開発株式会社(J POWER)の株式取得中止勧告・命令について】

実際に過去にも、株式取得中止勧告・命令が発動された事例がある。

2007年、電源開発の発行済株式の9.9%を保有するCTIが、2007年6月の定時株主総会の時点で増配要求を出すなど、経営方針に対して不満を表明し、2007年11月に社外役員の派遣を経営陣に要請した。

ところが、電源開発の取締役会が2008年1月7日、この提案に反対する旨の回答をした結果、CTIは1月15日、電源開発の株式の保有率を20%まで引き上げるため、外為法による事前届出を行った。

しかし関税・外国為替等審議会外国為替等分科会外資特別部会が4月15日、この株式取得は外為法27条10項に係る日本の「公の秩序の維持が妨げられるおそれがあるもの」とする意見を出したため、経産省はCTIの株式取得の注意勧告・中止を行っている。

 

それでは、今回の東芝メモリの3次元NANDはどうなるのか?

これは2007年9月の法改正により、輸出貿易管理令別表第一・外国為替令別表の項番(1~15項)に対象製品が列挙されている。

さらに武器の製造業に加え、武器等を使用するために設計されたプログラムやソフトチェア業も届出対象となっている。実際に、この表の中のエレクトロニクスの項目で「集積回路、フラッシュメモリ」などが明記されており、形式要件としては東芝の3次元NANDは該当する可能性が高いと思われる。

一方で、2012年に会社更生法適用中のDRAMファウンドリであったエルピーダメモリの米国マイクロンによる買収は認可されている。仮に今回、東芝メモリの外為法27条による株式取得中止勧告があるなら、エルピーダとのケースとの違いを明確に示してもらいたい。