日本政府は本当に「東芝メモリ」を救うべきなのだろうか?

技術流出の懸念は分かるけれど…
田中 博文 プロフィール

【上場時に政府が関与したケース】

一方で、エネルギー政策の一環として、政府が上場会社に対して大きく支配権を講じている場合もある。それが国際石油開発帝石株式会社である。

これは国際石油開発と帝国石油の経営統合により2006年に発足した「国際石油帝石ホールディングス」が前身で、2008年に国際石油開発・帝国石油の両社を合併し、現社名へ変更した。この会社は2006年に上場したが、上場当初からエネルギー安定確保の面から、唯一黄金株を発行しながら上場が認められている発行体である。筆頭株主は経済産業大臣である。

 

【ドイツのケース】

ここで他国のケースを見てみよう。昨年末、半導体の生産設備(有機金属化合物半導体用MO-CVD装置)を手がけるドイツ企業のアイクストロン(Aixtron)社を買収しようとした、中国のFujian Grand Chip社に対し、ドイツ政府・および米国政府は、アイクストロン社が同社に買収された場合、半導体技術が中国へ流出し、核技術、ミサイル、人工衛星など軍事産業に流用されることを懸念し、買収は中止となっている。

半導体事業は優位性のある技術か?

では、東芝の半導体技術はどのくらい重要な技術なのか。東芝メモリが製造している半導体はNANDと呼ばれるフラッシュメモリーである。

フラッシュメモリーとは…電気的に一括消去・再書き込みできる半導体メモリーのこと。DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)など従来のメモリーと違って電源を切ってもデータが消えないうえ、プリント基板に載せたままの状態でデータを消去し、さらに新たな情報を書き込むことができる。主に携帯電話のプログラム格納に使うNOR型と、デジタルカメラのメモリーカードや携帯音楽プレーヤーなどに使うNAND型がある

世界でこのNANDを製造しているのは、韓国サムスン電子(33%)、東芝と米ウェスタンデジタル(WD/34%)、米マイクロンと米インテル(24%)、韓国SKハイニックス(8%)の4グループである(2016年)

NANDは高密度化を行うにあたり、メモリ素子を微細化しなくてはならないが、高度に微細化すると、隣り合うメモリ素子が干渉を起こすため、最近では2次元の微細化から、縦方向にメモリ素子を積み重ねる3次元NANDを各社が開発し製造している。スマートフォンの大容量化や、IoT時代による3次元NANDメーカーの重要性は日々増しており、その最先端にいるのが東芝メモリということになる。

東芝は昨年、単位面積当たりの容量を従来の1.4倍に高めた3次元NANDを開発したと発表しており、この技術レベルは業界トップのサムスンにも引けを取らないレベルだという。そういった意味では、東芝メモリの3次元NANDは十分に技術競争力があると言えるだろう。